みなさん、こんにちは!
作文講師の菅野恭子です。学習塾シンクスで作文クラスを担当しています。
昨日のシンクス東品川教室での作文クラス。
小3の女の子ふたりが取り組んだのは、感想文でした。
今学期(10月~12月)の小3の感想文課題は、アインシュタインの伝記がテーマです。
なにをやった人なのかは詳しく知らなくても、アインシュタインという名前は、ほとんどの大人は耳にしたことがあると思います。でも、子どもの場合、知っているという子は、伝記が好きでよく読んでいる子が多い傾向があります。
今回の課題長文は、アインシュタインの伝記から、幼少期の部分について書かれたものでした。
アインシュタインは、学校が嫌いでした。それはなぜかというと、学校がまるで軍隊のようだから。先生の言うことは絶対で、疑問に思っても質問すらできない雰囲気がいやでたまりません。
学校は嫌いでも、勉強そのものには、興味津々でした。アインシュタインは、両親や叔父さんから、さまざまなことを学んでいきます。父からは文学、母からは音楽、そして叔父からは科学。幼いころから慣れ親しんだこれらの学問は、アインシュタインの生涯を支えていくものになります。
こんな内容の長文です。
感想文課題のときは、つぎのような流れで書いていきます。
- 中心を決める(このお話を読んでいちばん~は~です)
- 似た話を書く(私にも似た話があります。それは~)
- もうひとつの似た話または親に聞いた話またはもし~だったら(想像した話)
- まとめ(このお話を読んで~と思いました)
まず、いちばん心に残った場面をひとつ、挙げます。
- いちばんすごいと思ったのは
- いちばん不思議に思ったのは
- いちばんおもしろかったのは
- いちばんかわいそうだと思ったのは
など、子どもらしいものでOK。
この課題のときに子どもたちがよく書くのは、
「いちばんかわいそうだと思ったのは、学校が軍隊みたいだというところです」
子どもたちが軍隊というものを理解しているかどうか、やや微妙なところもあるのですが、それでもこの部分に反応するようです。
そして、つぎの段落の似た話で、
私たちの学校も、少し似たところがあります。運動会の練習などでは、みんなが同じことをしないと注意されます。いやだなあと思っても、ひとりだけやめるわけにはいきません。
などと、自分の経験を書いていきます。
また、聞いた話では、両親や祖父母など、身近なひとにインタビューします。
インタビューと言うのは、たとえば、
「アインシュタインの通ってた学校は軍隊みたいだったんだって。おばあちゃんが子どものころの学校って、どんな感じだったの?」
という具合に、自分以外の人の経験を聞き出すというイメージです。
もしかしたら、より深く知りたいと思う子は、アインシュタインが小学生だったのは何年ころの話なのか、ドイツ以外の学校(アインシュタインはドイツ生まれ)ではどうなのだろう? など、調べてみたくなるかもしれません。
こういった知りたい欲求の芽になるかもしれないのが、この聞いた話。
長文を読んで、その内容と自分の経験を重ね合わせること。また、さらに、自分以外の人の経験を重ね合わせること。
この体験を通して、長文について深く考えることができます。
アインシュタインという人物について知らなくても、この文章を読んで、自分ひとりの力で、すうっとこの物語に入っていけることが理想です。
でも、読書が習慣になっていない子や、そもそも読むのが苦手でさらっと見ただけで読むのを諦めてしまう子にとっては、その境地に辿りつくのはなかなか難しいことでもあります。
その点、今回の長文は比較的読みやすい内容です。毎日学校に行っている小学生にとって、
「学校が軍隊みたいで嫌だ!」
という少年の気持ちに寄り添うことは、それほど難しいことではないでしょう。
「アインシュタインの学校は、軍隊みたいだったんだって。みんなの学校はどう?」
こんな質問を投げかけると、いろいろな声が返ってきます。
「わかる~! 私の学校の先生も厳しいもん!」
とか
「え? そんなことないよね? 先生、優しいし」
とか。
そこから、
「昔はこんなことが当たり前だったんだね。」
「お母さんが子どものころは、先生が叩いたりしたらしいよ」
「今の時代の学校に通えてよかったなあ」
という意見に発展していきます。
指導の際には、ちょっと立ち止まって考えることができるような質問を投げかけるようにしているので、ほとんどの子が、自分の考えを深めていくことができています。
単純に読むという行為だけでは、こうやって立ち止まり考える余裕はなかなか生まれません。
感想文を書くというミッションがあってはじめて、内容についてじっくり考えることができるという状況を目にしている立場から断言できるのは、
感想文の練習は、読解力と共感力がつく
ということです。