みなさん、こんにちは!
作文講師の菅野恭子です。学習塾シンクスで作文クラスを担当しています。
今回は、2019年度低学年向けの課題図書『魔女ののろいあめ』での感想文の書き方について解説します。
『魔女ののろいアメ』の内容は?
魔女ののろいあめ……。タイトルだけ読むと、なんだか怪しげで、ちょっと怖そうな雰囲気もあります。でも、怖いのはタイトルだけですから、ご心配なく!
主人公のサキは、お姉ちゃんの借りてきた本を図書館に返しにいくことになります。お姉ちゃんなんて大きらい。そう思いながら歩いていると、見慣れない飴を売る屋台を発見します。その店主は、なんと魔女! お姉ちゃんが大嫌いだと思うサキの心はすっかり魔女に見抜かれているのです。魔女にそそのかされて、のろいアメを買うことになるのですが……。
きょうだいがいる子には、共感できる内容だと思います。大好きだけど、ケンカしたくなるほど憎らしく思うこともある、それでもやっぱり大好き。そんなきょうだいへの思いを描いたお話です。
『魔女ののろいアメ』で感想文を書くときのポイント
サキが魔女から買ったのろいアメ。のろいアメは、完成品ではありません。水あめのようなものをかき混ぜ、アメにするのですが、かき混ぜるときに嫌いな人の悪口を十個言わなくてはいけません。
サキは、お姉ちゃんの悪口を考えながらかき混ぜるのですが……
- いばりんぼう
- くいしんぼうでうそつき
- ねぼすけ
- おこりんぼう
- ケチ
- ブス
- いじわる
- バカ
まあ、いろいろ悪口が出てくるのですが、悪口を言うたびに、反対に優しくしてくれたことも思い出すのです。
きょうだいに同じような思いを持ったことがある子なら、比較的書きやすい一冊でしょう。
また、きょうだいに限らず、嫌なところもひっくるめて結局大好き! という人がいれば書きやすいです。その対象は親でもよいでしょうし、友達でもよいでしょう。
好きという気持ちって、どういうことだろう?
低学年ではまだ難しいですが、そのようなことを考えられると素敵な内容が書けそうです。
感想文の書き方の流れ
感想文の書き方の流れは、つぎのとおりです。四段落構成で書いていきましょう。
- いちばん印象に残ったところを決める
- 自分の似た体験を書く
- 似た体験をもうひとつ または もし~だったら(想像した話)
- 全体のまとめ
まずは、いちばん印象に残ったところを決める
まずやってほしいことは、いちばん印象に残ったところを決めることです。
- いちばんびっくりしたのは
- いちばんおもしろかったのは
- いちばんかわいそうだったのは
- いちばんわらったのは
など、特に心惹かれたシーンをあげてみましょう。
このお話だと、たとえば、
- いちばんびっくりしたのは、のろいアメをなめてもなんともなかったところです
- いちばんよかったのは、お姉ちゃんがのろいアメをなめずにすんだところです
- いちばんわらったのは、サキがお姉ちゃんの悪口を考えているところです
などでしょうか。
読みながら、印象に残ったシーンに付箋を貼るとよいですよ。
その中から、これぞ! という箇所を決めるようにしましょう。
実際に書く場合、学校によっては本の紹介を入れることをすすめていることもあるようですので、つぎのような書き方にするとよいかと思います。
私にはお姉ちゃんがいます。いつもケンカをしてしまうけれど、大好きです。この本は、
「おねえちゃんなんかだいきらい!」
と言っているサキという女の子が主人公です。いったいどんな話なのだろうと思い、読んでみました。私がこの本を読んで、いちばんよかったなあと思ったのは、おねえちゃんがのろいアメをなめずにすんだところです。どうしてかというと、サキが、のろいアメを作ったことを後悔していたみたいだったからです。
似た体験を考える
では、つぎに進みましょう。
つぎのミッションは、『魔女ののろいアメ』と似たような自分自身の体験について考えてみます。
たとえば
- 私のお姉ちゃんも、サキのお姉ちゃんのようにいじわるだ
- 私も、お姉ちゃんにいろいろと命令されることがある
- ときどき、お姉ちゃんなんかいないほうがいいのにと思うことがある
など。
反対に
- 私はお姉ちゃんととても仲が良くて、ほとんどケンカはしない
- 私のお姉ちゃんはいつも優しくて、サキのお姉ちゃんとは違う
という内容でもOKです。
お姉ちゃんに対するサキの気持ちと、自分の気持ちを比較してみるとよいでしょう。
私のお姉ちゃんも、サキのお姉ちゃんのようにときどき意地悪をします。命令したり、私のものを勝手に使ったりします。前に、私が集めていたシールを、お姉ちゃんが勝手に使ったことがありました。私はとても怒って、
「お姉ちゃんなんか大きらい!」
と、サキと同じことを言いました。だから、サキの気持ちがとてもよくわかりました。大好きなんだけど、いやなときもあります。でも、いつも、好きな気持ちが勝ちます。
もうひとつの似た体験か聞いた話、またはもし~だったら
似た体験が書けたら、つぎのミッションに進みましょう。
つぎは、3つの選択肢があります。
- もうひとつの似た体験を書く
- お父さんやお母さんに似た体験を聞く
- もし~だったら 想像した話を書く
いちばんのおすすめは、ふたつめの「お父さんやお母さんに似た体験を聞く」です。
お父さんやお母さんに、きょうだいについての話を教えてもらい、そのことを書くのです。その聞いた話と自分の考えを比較して、「もし~だったら」をあわせて使うこともできます。
もちろん、もし~だったらという想像した話だけでもOKです。
たとえば、
もし私だったら、のろいアメじゃなくて、ねがいアメが欲しいです。ずっとお姉ちゃんと仲良しでいられますようにという願いをこめます。
というように。
お母さんは、4人姉妹のいちばん下です。お母さんに
「いちばん下でいやなことはあった?」
と聞いてみたら、全然なかったし、いちばん下でよかったと教えてくれました。どうしてかというと、お姉ちゃんはみんなやさしくて、いろいろとめんどうをみてくれたのだそうです。私は、ふたりだとケンカになってしまうけれど、4人もいたらケンカにならないのかなとふしぎに思いました。もし私の下に妹がいたとしたら、私はやさしくできたかなあと考えました。もしかしたら、お姉ちゃんのように意地悪をしてしまうかもしれません。
最後は、全体のまとめ
ここまで来たらあと一息です。
最後は、全体のまとめを書きましょう。
低学年では、簡単な感想で十分です。
- ケンカをしてもやっぱりお姉ちゃんが好き
- お姉ちゃんがいてよかった
というものでOK。
書けそうなら、いろいろ肉付けしてもいいでしょう。
ケンカしてもやっぱりお姉ちゃんが好きです。この本を読んで、お姉ちゃんがいてほんとうによかったなあと思いました。ずっと仲良しでいたいなあと思います。
まとめ
低学年では、自分自身の感想を深めていくのはまだ難しいです。
ですから、似た体験やお父さんお母さんから聞いた話、それからもし~だったらという想像した話をメインに書いていくと、それなりのボリュームが出ます。
前述のとおり、低学年の子にとって感想文はかなり難しいものです。親御さん主導で進めてあげるくらいの気持ちで取り組んでもよいでしょう。
どうしてわからないの? というもどかしさやイライラも出てくるかもしれませんが、決して怒ったり急かしたりすることなく、温かく見守ってあげてください。