カンノのひとりごと

成績は良いのに相手の気持ちを理解できない子

勉強はできても相手の気持ちを理解できない子って

「成績が良くても相手の気持ちが理解できないのも困るからねえ」

ママ友が集まり、成績が良い子の話題をするときに、

こんなセリフが飛び出すことがあります。

私自身、子育て中によく耳にすることがありました。

成績が良いことと、相手の気持ちが理解できないことは、必ずしもイコールではないのですが、そう考える人が多いのはどうしてなのでしょう?

人と関わることなく、ただひたすら勉強に打ち込んできたから?

もしかしたら、そういう観点もあるかもしれませんね。

今日は、どうしたら人の気持ちを理解できる人になれるのか、また、作文の学習がどう影響するのかについてお伝えします。

人の気持ちがわかるようになるには

先ほども、勉強ばかりしていて人と関わることがないから、と言うことに触れましたが、

これは間違い無いでしょう。

もちろん、勉強していても、勉強していなくても、人と関わることが影響しているのは間違いありません。

それも、ただ関われば良いのではなく、その量と深さが大事です。

どれだけ心を揺さぶられる体験をしたか、その体験の中から、どれだけ深く考え、自分自身の価値観としてきたか。

人の気持ちがわからない子は、この量と質が足りません。

たくさんの体験をしてきていても、考えることをしなければ、質が伴いません。

多くの生徒さんと対話をしてきて、質が足りない子に共通することがあると感じています。

それは、表情を読み取る力が育っていないこと。

表情や仕草に見て取れる人の感情

人の表情や仕草を書き入れることで、文章はぐっと表情豊かになり、登場人物はいきいきと動き出します。

作文を書くときも、このポイントを活かしてもらっています。

たとえば、

僕は悔しくて泣いた。

という一文を

僕は悔しかった。思わず涙が溢れてきた。誰にも悟られないように、汗を拭くふりをして顔をわしゃわしゃと大袈裟にこすった。

と仕草を入れることで、心情まで見えてきませんか?

 

もうひとつ、2023年の課題図書『ふたりのえびす』から。

「ぼく、方言がわかんなくて、とほうに暮れていた時、太一くんのおもしろい言葉を聞いて、気が楽になったんだ」

「あ、そうなの、ふうん」

なんだかこそばゆくなって、オレは体を左右にゆらす。それからちょっとばかり胸をはった。

『ふたりのえびす』

褒められて照れくさくなった様子を

「体を左右にゆらす」「ちょっとばかり胸をはった」

と言う仕草が代弁しています。

指導の際に、会話の主の表情や仕草はどうだったかを質問します。

すると、中には、全く覚えていない子や意識を向けていない子もいます。

この状態のまま成長すると、人の気持ちがわからない状態になってしまうように感じています。

 

物語の読解にもつながる

作文を書くときに、表情や仕草に目を向けることができるようになると、読み手の頭にイメージを湧かせる文章が書けます。

この効能は、書くときだけにとどまりません。

物語の読解も、表情がどう書かれているかが読み取れたら、理解できるようになります。

読解ができない子は、心情の描写を理解することが苦手です。

これは、やはり、実体験で人との関わりがあまりなく、表情を読み取る術が身についていないからと言えるのではないでしょうか。

いずれにしても、人の関わり方が足りないため、表情を読み取る力が育たないと言う

はじめにお伝えしたことにつながってきます。

量と質をどう埋めるか

人との関わりの中で、相手の表情や仕草を読み取り心情を理解していくことが、もちろん望ましいと思います。

しかし、今の子たちはその時間が足りない。

タイパタイパと効率重視の世の中ですし、色々な世代と交流することも減っています。

体験から得られるものにも限界がある……

うちでは無理だわ……

とがっかりされた方もいらっしゃるのでは?

 

大丈夫です。

体験の量と質を埋めるモノがあるんです。

だから読書が必要なんです

それは、まず読書。

物語には、人の表情や仕草の表現が至るところに溢れています。

こんな気持ちのときは、こんな表情をするんだなあ。

こういう仕草をしたときの気持ちは、〇〇なんだなあ。

このように、子どもは少しづつ理解を深めていきます。

特に9歳から12歳は、脳のゴールデンエイジとも呼ばれ、物語の理解度も格段に成長するときです。

主人公の体験を自分の体験のように感じることができるようになるのもこの時期。

良質な物語を読むことで、体験の量と質を増やすことができます。

読書体験を活かせるのが作文

学んだことは実践しないと身につかないと言います。

読書で得た知識は、実際に自分が書いてみることで揺るぎないものになります。

前述のとおり、私は作文の指導の際に、表情や仕草を書き入れることを勧めています。

日頃から意識を向け、作文を書くときに熟考することで、表情や仕草から心情を読み解く経験が格段にアップしていくのです。

 

作文の学習が、人の気持ちを理解できる子になる手助けをしてくれます。

単に文章力をつけたり、受験を突破するためだけでなく、

人として豊かな人生を歩むための勉強が作文だと、私は思ってます。

 

 

 

 

ABOUT ME
きょうこ先生
2003年より作文指導に携わる。東京(品川)横浜にて対面指導。 現在はオンラインをメインに、愛媛県松山市にて対面指導を行っている。長く続けてくださる生徒さんが多いのが自慢!(平均5〜6年。最長は13年!) 作文がスラスラ書けるようになった、国語の成績がぐ〜んと上がったという声はもちろんのこと、自分の意見が言えるようになった、コミュニケーション力が上がった、親子の会話が増えたなどの声も多くいただく。