みなさん、こんにちは!
作文講師の菅野恭子です。学習塾シンクスで作文クラスを担当しています。
7月の5年生の感想文に、日本人の曖昧さについて考える課題があります。
余白の多い日本の水墨画と、隙間なく埋め尽くされるアラブの絵画とを一例に出して、日本人の特徴として、相手に考える余地を与えることが書かれています。
「そこをなんとか……」
とお願いされた場合、NOがYESに覆る場合もあります。相手の出方次第というわけですね。
日本人のNOは、絶対的な否定ではなく、一部にYESを含んでいる。
また、YESは、その中にNOの要素をあわせもっている。
これを読んで、はっとした方も多いのではないでしょうか?
日本人の場合、YESとNOは、お互いを含んでいるイメージですね。
対する外国では、YESとNOの関係性は、この図のようなイメージでしょう。
長文の中に、具体的にアラブの国々と書かれていましたので、アラブの国々としましたが、欧米も同じ傾向でしょうね。
白か黒か、はっきりさせるのを嫌う価値観が表れているといえそうです。
前置きが長くなりましたが、ここからが今日の本題です。
思ったことは、はっきり言う? 言わない?
先日のシンクス作文クラスでのこと。
中学生の意見文練習で、
「思ったことをはっきり言うのはよいか、よくないか」
について考えてもらいました。
意見文の書き方
まず、意見文の書き方の流れから。
YESかNOかで答えることができる内容については、つぎのような流れで構成を考えます。
- 是非の主題(~はよい or ~は悪い)
- 理由その1(理由+体験実例)
- 理由その2(理由+体験実例 or 聞いた話)
- 反対意見への理解 → 是非の主題
YESかNOかの意見文でやるべきこと
まずは、テーマに対して、自分はYESの立場なのか、NOの立場なのかを考えます。
- YES 思ったことをはっきり言うのはよい
- NO 思ったことをはっきり言うのはよくない
のいずれかになりますね。
YESかNOか、自分の立ち位置が決まったら、つぎに考えるのは、
どうしてYESなのか、どうしてNOなのか、その根拠をふたつ挙げることです。
ひとつの例として、私自身の考えを挙げておきます。
思ったことをはっきり言うのはよくないと思う。
理由1 気付かないうちに人を傷つけることがあるから
理由2 無駄な争いを生んでしまうから
みなさんは、いかがでしょうか?
反対に、「思ったことをはっきり言うのはよい」という立場の方は、このような理由を考えてくれました。
イメージできたでしょうか?
まずは、テーマについてYESかNOか、自分の立ち位置を決める。
そして、その根拠となる理由をふたつ考える。
体験談で説得力を持たせる
ここまでできたら、つぎは、さっき挙げた理由に、自分の体験談を添えていきます。
といわれてもピンとこない方もいるでしょう。
また、具体的に例を挙げてみますね。
私は、
気付かないうちに人を傷つけることがあるから
という理由をあげました。
このことにまつわる体験としては、つぎのような体験談が考えられます。
以前、友達がプレゼントしてくれた手作りクッキーは、お世辞にもおいしいと言えないほどまずかった。「どう、おいしかった?」と聞かれたけれど、本当のことは口にできず、「うん、おいしかったよ、ありがとう」と返した。もし「まずかった」と正直に言ったとしたら、きっとお互い気まずくなっていたと思う。また、母が作る料理も、正直おいしくないときがある。でも、仕事から帰ってひと息つく間もなく夕飯の支度をしてくれている母に、まずいとは言えない。ベストを尽くしてくれたことに対して、マイナスのことを言うのは、私は好きではない。たとえ、心の中では思っていたとしてもだ。
反対の、「はっきり言うのがよい」という主題を立てた場合の理由、
自分を護ることになるから
に添える体験としては、こんな感じかな。
私は、自分のペースを崩したくないタイプだ。また、ひとつのことにじっくり集中して取り組みたい。人からの頼み事なども、不用意に引き受けてしまうと、あとでとても困ってしまう事態に陥る。以前、どうにも身動きがとれないくらい忙しくなってしまって、ほとほと疲れた経験があり、それ以来、自分にできないことははっきりと断るようになった。もちろん、断るときはあまりいい気分ではないが、何度か断るうちに、これは自分を護ることであって、なにも悪いことをしているのではないと気づいた。断ったら、相手は他の人に頼むのだし、頼まれたことを快くやれる人がやるほうがずっとよいだろう。もしはっきりと言うことをしなかったら、私はきっと、自分がやるべきことに取り組めず、ずっとモヤモヤしていたはずだ。
いずれも、選んだ理由を裏付けるものになっていますよね。
体験談を入れるのは、口先だけで理由を述べるのではなく、自分自身の実体験に基づき導き出された考えなのだと、読み手に説得力を持たせるためです。
イチロー選手の名言として有名な言葉。
小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道だと思っています
これは、実際に行動し続けてきたイチロー選手がいうからこそ説得力がありますよね。
理由のあとの体験は、このような効果があるのです。
体験談は、個人的なものから一般的なものへ
ひとつめの理由について完成したら、つぎのふたつめの理由です。
ここでは、ひとつめの理由と同様、個人的な体験談を添えてもよいですし、親など身近な人に聞いた話題でもよいです。(聞いた話と呼びます)
また、読んだ本からの情報でもよいですし、社会的な話題でもよいです。
ひとつめの理由よりも、ちょっと大きな視点で物事を見るような話題だと望ましいですね。
最後のまとめ
最後の第四段落。
反対意見への理解から再度是非の主題という流れでした。
反対意見とは、自分とは反対の立場を取る人に対し、理解を示してあげること。
「たしかに思ったことをはっきり言う方がよいという人もいるし、それも一理あるのだが……」
という形で反対意見への理解を述べます。
そしてそのあと、再度、是非の主題を書いておしまい。
「以上の理由から、私は、思ったことをはっきり言うことはよくないと考える。」
のように結びます。
自分の考えを探っていこう
意見文を書くときは、いままでの自分の体験を総動員することが大切です。
どうして自分はこう考えたのだろう?
ひとつひとつ探っていくことで、より充実した内容の意見文が書けますし、なにより、自分の価値観や世界観が見えてきます。
私自身は、この意見文について考えたことで、
自分が我慢すればなんとかなるから、まあ、がんばってみるか。。。
と思って心の中の思いを飲み込んでしまうクセがあるんですよね。そして、結局自分を追い込んで、とても辛くなってしまう。。。
そんなことを延々と繰り返していることに気付きました。
遅いですね(笑)
中学生のうちに、こんなふうに自分のパターンに気付けるのは、とてもよいこと。
なぜって、もうやめたいと思うパターンに気付いたら、やめる選択もできるので。
また、逆に、自分の好むパターンや、こんな人生を歩みたいという姿も見えてくるはずです。なんていうか、心の羅針盤のような役割を果たしてくれるものが早いうちに見つかると、最短距離で夢に近付けるような気がします。
まあ、寄り道回り道も、また人生ですけどね。