みなさん、こんにちは!
学習塾シンクスで作文を教えている菅野恭子です。
感想文の書き方についての記事、今回で6回目になります。
第一回は、中学年向けの課題図書「レイナが島にやってきた!」で感想文を書くなら
第二回では、高学年向けの課題図書「こんぴら狗」で感想文を書くなら
第三回では、高学年向けの課題図書「ぼくとベルさん」で感想文を書くなら
第四回では、中学年向けの課題図書「最後のオオカミ」で感想文を書くなら
第五回では、低学年向けの課題図書「きみ、なにがすき?」で感想文を書くなら
をお伝えしました。
今回は、高学年(5,6年生)向けの課題図書「奮闘するたすく」で感想文を書くためのポイントをお話ししようと思います。
前回同様、親御さんがご家庭で教えることを前提にすすめていきますが、高学年なので、お子さん本人が読んでも理解できると思います。
課題図書「奮闘するたすく」ってどんな内容のお話?
いまの小学生のおじいちゃんおばあちゃん世代は、意外と若い方が多いし、三世代同居の数も減っているので、介護や、認知症と耳にしてもピンとこないかもしれませんね。
このお話の主人公は、5年生の佑。
近所に住むおじいちゃんが、どうも、認知症になってしまったらしい。
夏休みを利用して、おじいちゃんのデイサービスへの送迎をすることになった佑と、佑のともだち一平の、ドタバタ奮闘記です。
介護という、子どもにはあまり縁のない世界。そこでどんなことが繰り広げられているのか、また、佑と一平は、いったい何を感じるのか。
お年寄りのお世話とは?
人の役に立つってどういうこと?
老いていくって?
軽い雰囲気で読める内容ではあるのですが、深めれば社会問題にまで発展させることのできるような、深いテーマのお話です。
「奮闘するたすく」はどんな子に向いている?
主人公が男子ということもあり、男子が共感できる内容になっています。
もちろん、女子にも。大変読みやすい軽いタッチの文章なので、ボリュームのわりに抵抗なく読めるのではないかと思います。
また、福祉系のお仕事に携わるお母さんも多いと思いますので、家族など身近なところにそういったお仕事をされている方がいる子にも向いていると思います。
感想文の流れ
大きな構成としては、
- あらすじの紹介
- ネタ1
- ネタ2
- ネタ3
- まとめ
という流れで進めていきます。
ネタとは、
いちばん心に残った場面は~
↓
自分の似た体験
↓
家族など、人から聞いた似た体験
この流れをひとつのまとまり(ネタ1)とします。
いちばん心に残った場面をひとつ、深くじっくり書いていってもいいですし、それだけでは字数的に足りない場合は、ふたつ、またはみっつと、ネタ3くらいまでの構成を作ることができます。
「奮闘するたすく」のテーマは?
認知症になってしまったおじいちゃんと、その孫 佑のお話ですが、ほかにもいろいろな登場人物がいます。テーマも、介護に限らず、様々な要素が絡み合っているお話です。
- 高齢社会での介護とは
- 老いていくこととは
- 介護の現場で働く人々
- 介護の資格を取るために外国からやってきて熱心に勉強する人々
- 人の役に立つとは
- 人の役に立つことと自己満足
- 生きるとは
このようなテーマが考えられるのではないでしょうか。
「奮闘するたすく」の主な登場人物
「奮闘するたすく」に登場する人々の中から、主な人物をご紹介します。
主人公 野沢佑(たすく)
5年生の男の子。父・母・姉との4人家族。
よくいる元気な男の子。ちょっと気が弱いところがあり、担任の先生や姉に逆らえない。
長尾一平
佑の親友。お調子者で、デイサービスこもれびのレクでは司会をまかされるほど。
彫りの深い顔が、おばあちゃんに人気。
大内善雄 佑のおじいちゃん
元警視庁捜査一課の刑事。認知症になってしまったようで、物忘れの症状がある。プライドが高く、こもれびに通うことや、なれなれしくされることに抵抗を示す。
林先生 佑や一平の担任
若い女性の先生。とてもきびきびはきはきしていて、林先生ににらまれると、佑は「イヤ」といえない。ボランティアも大好きな先生。
インドネシアから介護の勉強に来ているリニさん
インドネシアから介護資格を取るために勉強に来ている。挨拶はハグアンドキス。はっきりものをいうタイプ。ノートには、インドネシア語・英語・日本語がぎっしり並ぶほどの勉強家。
こもれびの主任ヘルパー 林さん
元気で明るいヘルパーさん。みんなの信頼も厚い。若いときに、お年寄りになれなれしいと言われて悩んだ経験がある。
まずは心に残った場面をあげていこう
「奮闘するたすく」を読んでみて、心に残った場面はどんなところだったかな?
読みながらメモしてもよいし、付箋を貼っていってもよいでしょう。
239ページというかなりのボリュームなので、一か所一か所見ていったらきっと大変なことになると思います。
高学年で、ある程度俯瞰的に読む力もついてきていると思いますので、
- すごいと思ったのは、佑が夏休みのあいだおじいちゃんの介護を買って出たこと
- 立派だと思ったのは、こもれびで働く人たちが、人の役に立つことがうれしいと言って楽しそうに働いている姿
- 介護施設について今まで縁がなかったのだけれど、これからどんどんお年寄りが増えて、こういう施設も、施設で働く人も必要なのだと実感したこと
このように、ある程度大きな単位で考えてみてください。
心に残った場面が決まったら、その話と似た経験を考えます。親御さんは、ご自分の似た経験や、知っている知識をお話ししてあげてください。
これを自力で読んでいる小学生の子は、お父さんやお母さんなど、身近な人にインタビューしてみましょう。何をインタビューしてみるかというと、
「このお話は、5年生の男の子が認知症になったおじいちゃんのデイサービスに付き添ったり面倒を見る内容なんだけど。私は、〇〇〇の場面がいちばん心に残ったんだけど、お母さんはなんか、思うところない?」
こんな感じで、本のあらすじを説明し、自分の印象に残った場面を伝えてみましょう。
もちろん、この本を読んでもらうのがいちばんよいのですが、さらっと読める本でもないですからね。
ここまでできると、ネタを完成することができます。
ひとつのネタを深めることが難しい場合は、もうひとつ、ネタを作りましょう。
ネタ=【心に残った場面・似た経験・聞いた話・もし~だったら】
ネタというのは、心に残った場面を核にして、自分自身の似た経験や、身近な人から聞いた話、ニュースや本またはテレビなどで得た知識、もし~だったらという想像した話などをつけくわえていきます。
このような図をイメージしていただければよいでしょう。
三つすべて揃えば、内容もぐっと充実してきますが、最低でもふたつ入れることができるようにしましょう。
「もし~だったら」の想像した話は、比較的簡単ですから、ぜひ使ってみてくっださい。
たとえば、
もし私が佑だったら……
というように。
最後にまとめの部分
最後の部分は全体のまとめです。
いちばん心に残った部分から、体験談、聞いた話と、すべてに関連する感想が入ることを目指してみましょう。
これがクリアできると、一貫した内容の感想文になります。
「奮闘するたすく」のテーマを考えると、どの部分にアプローチするかにより、まったく違う感想になると思います。
自分の素直な気持ちを書いてみましょう。
参考例
この物語は、主人公の佑が、認知症になってしまったおじいちゃんのお世話に奮闘する話です。夏休みのあいだ、佑は親友の一平とともに、おじいちゃんの付き添いで介護施設こもれびに通うことになります。こもれびで働く人たちとのふれあいや、たびたびおじいちゃんが引き起こす騒動を通して、佑と一平が成長していく様子をみることができます。
私が印象に残った場面は、ふたつあります。まずひとつめは、佑がおじいちゃんが認知症になった様子を見て、せつないようなやるせないような気持ちになるところです。「わしはどうしてこんなことになってしまったのか」とつぶやくおじいちゃんに、心臓をつかまれたような、身体の芯が引きつって胸が苦しくなるような気持ちになります。おじいちゃんは元警視庁の捜査一課で働いていた経歴のある、きびきびとしっかりした人だったのです。そんなおじいちゃんが認知症になり、今まで見たこともないような状態になっていくなんて、想像しただけで苦しくなってきます。佑の気持ちがよくわかりました。というのも、私も同じような話を聞いたことがあるからです。母のおばあちゃん、私のひいおばあちゃんのことです。私が母のおなかにいるときに死んでしまったので、ひいおばあちゃんに会ったことはありません。母の話によると、ひいおばあちゃんは、とてもおしゃれで勉強家で、いつも周りのおばあさんたちのリーダーだったそうです。ひいおばあちゃんは、認知症ではなかったのですが、それでも年老いて日に日に弱っていく姿が、母にはたまらなく辛いことだったそうです。老いていくのは、なんて残酷なことなのだろうと思い、母は時々、まるで哲学者のように老いってなんだろうと考えたそうです。もし私が母だったら、やはり同じ気持ちになったと思います。いつかだれでも、生きている限り年老いていくのですが、認知症とか寝たきりとか、どうしてそんな辛い仕打ちを受けなくてはならないのだろうと悲しくなってきます。
もうひとつ印象的だった場面は、こもれびで働く人たちが、人の役に立てて嬉しいと、みなやりがいを感じているところです。私にもそれと似た気持ちになったことがあります。6年生になり、1年生のお世話をする機会がありました。1年生にお礼を言われるたびに、役に立てたうれしさに、自分にも価値があるような気持ちになりました。本の中で、役に立つというのは自己満足に過ぎないという話が出てきますが、私は、自己満足でもよいことだと思いました。でも、母は違う意見でした。介護の現場では、なんでもかんでもやってあげるのは、本当はよくないのだそうです。自己満足でお世話をしていると、やりすぎてしまう恐れがあると言っていました。それを聞いて、たしかにそういう面もあるなと思いました。
佑も一平も、お年寄りとの交流にはじめは戸惑っているようでしたが、そのうちすっかり慣れてきました。誰でも老いていくという当たり前のことが、私たち子どもには、先のことすぎてわかりません。でも、こうやって身近にお年寄りがいると、きっと、いろいろなことがわかるのだと思います。なぜなら、知らないからこわいという一面もあるからです。今度おじいちゃんおばあちゃんに会うときは、年を取るってどういうことなのか、いろいろ話してみたくなりました。この本は、そんな気付きを与えてくれた一冊です。
参考例でのポイント
参考例で使った心に残った場面はつぎのふたつです。
かくしゃくとしていたおじいちゃんが認知症になって変わってしまった姿に、なんともいえないさみしさを佑が感じる場面が、たびたび登場します。
そのシーンをひとつめの印象的な場面として使用しました。
もうひとつは、人の役に立てて嬉しい=自己満足なのではないか?という場面を使用しています。
似た経験や聞いた話、想像した話をうまくもちよって、ネタを完成させる流れは理解できたでしょうか?
「奮闘するたすく」は、比較的似た経験がイメージしやすいお話かと思います。
自分のおじいちゃんおばあちゃんはどうか、自分だったら介護の仕事に就くか、自分が年老いたときにデイサービスに行くとなったら…?
など、自分の身近な問題として考えてみましょう。
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