みなさん、こんにちは。
作文講師の菅野恭子です。学習塾シンクスで作文クラスを担当しています。
今回は、高学年向けの課題図書「ぼくとニケ」を読んでの感想文の書き方を解説します。
かわいい猫ちゃんの表紙です。
猫好きの方は、この表紙につられて手に取ってしまうかもしれませんね。
「ぼくとニケ」はこんな本
ある日、子猫を飼うことになった主人公のぼく。なぜかというと、幼馴染の仁菜に自分の代わりに飼ってくれと頼まれたから。仁菜の家では、お母さんが猫嫌いのため、飼うことができないのです。仁菜は学校をずっと休んでいて、ぼくとの関係も、無邪気な子ども時代とは違って、なんとなくぎこちない。ニケという子猫の成長を通して、子どもから大人へと変化していく時期の心模様や、命の大切さなど、ぼくは様々なことに気づきます。
筆者は獣医師ということもあり、子猫の描写がリアルで、目の前に猫がいるかのようにイメージがわきます。
「ぼくとニケ」はこんな子におすすめ
- 猫が好きな子
- 猫を飼っている子
- 親の言うことを小さいときのように受け入れられなくなってきた子
- 学校へ行くことに疑問を持っている子
- 人の目が気になる子
他にも多々ありますが、とにかく、猫が好きな子や猫を飼ってみたい子には間違いなくお勧めできる一冊です。
どんな流れで書いていくか
通常の感想文の書き方どおり4つのまとまりを作っていきましょう。学校では、はじめ・なか・おわりという3つのまとまりで書くよう指導されているかもしれません。その場合は、なかの部分を二つに分けて書く意識で書くとよいでしょう。
4つのまとまりは、つぎのようにしましょう。
- 本を読んでいちばん印象に残った部分をとりあげる
- 印象に残った部分と似た体験を書く
- もうひとつの似た体験または家族や友人に聞いた話を書く
- 全体のまとめ
では、それぞれ詳しく説明していきます。
★私の解説はひとつの例であって、正解ではありません。おおまかな流れはこのように4つのまとまりに分けて書くとよいですが、内容に関しては真似する必要はありません。
1.いちばん印象に残った部分をあげてみよう
ぼくとニケは、221ページまであります。かなり長い物語ですので、一文だけ選ぶというのは難しいですね。ある程度の要約力が必要になってきます。
たとえば、
- 私がいちばん印象に残ったのは、みんなでニケと過ごした最後の場面です。
- 私がいちばん心に残ったのは、仁菜が、周りの目線など気にしない強い子だということです。
- 私がいちばん印象に残ったのは、生き物を飼うことには責任を伴うということです。
このように、印象に残った場面を要約してみましょう。心に残る場面は多々あると思いますので、読む際に付箋を貼っておきましょう。付箋に、重要度がわかるよう印をつけておくのもおすすめです。その重要度に応じて、自分がどんな話題にひかれるのか、把握できると思います。たとえば、子猫のニケの表紙にひかれて読んでみたのに、付箋が貼られている場所は、ぼくと仁菜のやりとりのシーンばかりだ、ということもあるでしょう。
2.いちばん〇〇と同じような体験をしたことを書く
さっきの段階で、書きたいことの中心を決めることができました。ここでは、いちばん印象に残った部分と同じような自分の体験を書いていきます。
- 子猫を拾ってきたことがある
- 猫を飼いたいと思っているけれど、まだ許してもらえない
- 実際に猫を飼っていて、責任をもって世話している最中だ
- 人の目が気になってしまって、つい人に合わせてしまう→それで人を傷つけてしまったことがある
- 成長とともに、両親と意見が食い違うことが多くなってきた
などなど。「ぼくとニケ」には、高学年の子どもたちが遭遇することや共感することがたくさんでてきますので、似た体験は探しやすいと思います。
3.もうひとつの似た体験または聞いた話を書く
さて、似た体験をひとつ書くことができました。
つぎは、もうひとつの似た体験を書くか、または、両親や兄弟、友人から聞いた話を書いてみましょう。
- 母も子どものころ猫を拾ってきて飼ったことがあるそうだ
- 父は、やはり高学年のころ、両親に反抗したくてたまらなかったそうだ
- 友達は、飼っていたペットを亡くして、とても悲しんでいた
などが考えられそうです。身近な人と「ぼくとニケ」の内容を話してみて、出てきた話題から聞いた話を見つけてみましょう。
4.最後は全体のまとめ
どんなところに惹かれるかは読んだ人の数だけあります。「ぼくとニケ」を読んで、この本のテーマはなんだと思いますか? そのテーマにちなんだ「わかったこと」でまとめるとよいですね。
たとえば、生き物の命の大切さだと思ったら、
「ぼくとニケ」を通して、改めて生き物を飼うには、責任が必要だとわかった。猫を飼うことに反対する両親の気持ちも理解できた。両親に、責任を持ってペットを飼えるようになったと認めてもらえるよう、きちんとした生活をしていきたい。そして、猫を飼う夢が叶ったら、しっかりお世話をしたいと思っている。
こんなふうにまとめてみましょう。(一例です)
「ぼくとニケ」感想文の参考例
私は、もうずっと猫を飼いたいと思っている。子どものころから猫が好きで、友達の飼っている猫を、自分の猫のようにかわいがっている。だから、かわいい子猫の表紙が目に入ったときに、どうしてもこの本を読んでみたいと思った。猫が好きな私にとって、印象に残る場面は山のようにあるが、その中でもいちばん心に残ったのは、みんながニケとともに過ごした最後の場面だ。もうすぐニケの命が消えてしまう。安楽死を選ぶのか、どうするのか、読んでいるあいだ気が気でなかった。家に連れて帰って、一緒に過ごすことになったところで、涙が止まらなくなった。
自分では飼ったことがないものの、おばあちゃんの家ではタマという猫を飼っていた。小学生の3年生ころまでは、夏休みや冬休みはずっとおばあちゃんの家で過ごしていた。両親が共働きなので、いちばん安心に過ごせるおばあちゃんの家に送り込まれていたからだ。ひとりでおばあちゃんの家に行く楽しみは、タマと遊ぶことだった。タマのほうは、それほど私のことを好きではなかったようだが、私はタマが大好きだった。相手にされないのに、いつもタマにちょっかいを出したり、じっと動きを眺めたりしていた。そのタマが死んだのが、去年のことだ。おばあちゃんからの電話で、タマが死んだことを知った。まだ、身近な人の死を経験したことのない私にとって、大好きなタマにもう会えないことが、こんなにさみしく悲しいものだと初めて理解した。だから、たとえ今夜死んでしまうとしても、ニケとともに過ごしたいという気持ちが、痛いくらいにわかった。
私に猫を飼うことを許してくれない母は、こんな話をしてくれた。母は子どものころ、犬が飼いたくて、ねだりにねだって犬を飼ったそうだ。そのときは、毎日散歩に行くのと餌をやることを条件に飼うことになったらしい。でも、友達と遊ぶことや、朝は眠いと言っては、お世話をすることをさぼってしまった。結局、お世話をするのは祖母の仕事になった。その犬が死んだのは、母がすでに家を出てからだったそうだか、とても後悔したという。約束も守らずに平気でいたことが、とても悔やまれたのだと。生き物を飼うということは、命を預かるという責任がある。病気になるかもしれないし、私の家のように家族みんなが留守がちの家では、さみしくてストレスがたまるかもしれない。おもちゃじゃないのだから、そう母は言う。だから、私が、自分の身の回りのこともひとりできちんとできるようになり、さらに、生き物の面倒をみられるようになったら、飼うことを許すつもりだと。
この本を読んで、生き物の命の大切さはずっしりと心にせまってきた。また、責任を持って飼わなくてはいけないこともよくわかった。母が言うことも、そのとおりだなと納得できる。自分自身の生活をきちんとして、いつ猫が来てもしっかりお世話ができる余裕を持ちたい。一日も早く、猫との生活ができる日が来るよう、がんばりたい。