みなさん、こんにちは!
学習塾シンクスで作文を教えている菅野恭子です。
感想文の書き方についての記事、今回で4回目になります。
第一回は、中学年向けの課題図書「レイナが島にやってきた!」で感想文を書くなら
第二回では、高学年向けの課題図書「こんぴら狗」で感想文を書くなら
第三回では、高学年向けの課題図書「ぼくとベルさん」で感想文を書くなら
をお伝えしました。
今回は、中学年(3,4年生)向けの課題図書「最後のオオカミ」で感想文を書くためのポイントをお話ししようと思います。
前回同様、親御さんがご家庭で教えることを前提にすすめていきます。
感想文の流れ
大きな構成としては、
- あらすじの紹介
- ネタ1
- ネタ2
- ネタ3
- まとめ
という流れで進めていきます。
ネタとは、
いちばん心に残った場面は~
↓
自分の似た体験
↓
家族など、人から聞いた似た体験
この流れをひとつのまとまり(ネタ1)とします。
心に残った場面がいくつかある場合、その数に応じてネタ3くらいまでの構成を作ることができます。
「最後のオオカミ」はどんなお話?(あらすじ)
登場人物は、マイケル・マクロードとその孫娘ミヤ。
マイケル・マクロードが、肺炎で療養中のこと。ふと、今までやろうやろうと思いながら手をつけることができなかったことに取り組むチャンスが来たと考えます。そのこととは……
家系図を遡ってみたいという長年の夢を実行すること。
私はいったいどこから来て、祖先はどんな人なのか? インターネットやメールを使って自分のルーツを探し、先祖と子孫を一本の線でつないでみるのだ。自分の家系を、できるかぎり遠くまでさかのぼってみよう。
母方の家系はすぐに判明するものの、父方の家系をたどるのは大変難航します。
そんな中、孫娘ミヤの手助けもあり、もしかしたら先祖かも?という人、ロビー・マクロードの遺言書を読むことになります。インターネットで世界中が繋がれる時代です。家系サイトに公開したところ、遠縁ではないかという人から連絡があったのでした。
その遺言書が物語の中心になります。
その遺言書には、「最後のオオカミ」という題がつけられていました。
スコットランドに住む、両親の顔も知らない孤児、ロビー・マクロードが、アメリカにやってきてこの遺言書を書くまでのいきさつが綴られている「最後のオオカミ」。いつもいつも死線をさまよっていたロビー・マクロードが生きのびて来られたのは、戦友と呼ぶべきオオカミがいつも一緒だったから。そのオオカミは、スコットランド最後のオオカミとされるイギリス軍に射殺されたオオカミの子ども。その存在は知られていない。だから「最後のオオカミ」。孤児の自分とそのオオカミの境遇があまりに似ているので、拾わずにいられなかったロビー・マクロード。スコットランドとイギリスの戦争、アメリカへの渡航、アメリカでの開拓を通して、いつでも一緒だった。
肺炎が治ってから、マイケル・マクロードはミヤとともにアメリカの、ロビー・マクロードが開拓した農地を尋ねていく。そこには、遺言書に描かれた風景が広がっていた。
親子で読んでみましょう:読むときにしたいこと
かならず親子で読んでみましょう。
読みながら、心に残った場面をチェックしておきましょう。
メモを取りながら、または、付箋を貼りながら読むことをお勧めします。
二種類の付箋を用意して、親子それぞれ自分の興味のある部分に貼るようにしてもいいですね。
同じところに貼ってあれば共感できるし、違うところに貼ってあれば、「へ~~~、そこなんだ!」という驚きがあったり、なかなかおもしろいものですよ。
心に残った場面をもとにネタづくり
さて、読み終えたら心に残った場面をあげてみましょう。
いちばん興味を持った場面、いちばん驚いた場面、いちばん嬉しかった場面、いちばんハラハラした場面。。。などなど、とにかく心を動かされた場面をあげてみましょう。
まずは記憶に残る場面をいくつでもあげてみましょう。
たとえば、
- いちばんいいなあと思ったのは、ミヤには仲良しのおじいちゃんがいることです
- いちばんよかったと思ったのは、ロビー・マクロードが無事にアメリカで幸せに暮らせたところです
- いちばんすごいと思ったのは、12歳のロビー・マクロードがひとりで生きて行こうとしたところです
- いちばんかわいそうだと思ったのは、ロビー・マクロードとオオカミとの別れの場面です
というように。
ひとつひとつの場面を上げていったらきりがない場合もあります。そのときは、お母さんが同じ内容のものをうまくまとめてあげるとよいでしょう。
たとえば、「ロビー・マクロードの生きのびようとする力がたくましいこと」というようにまとめます。
つぎにしてほしいことは、心に残った場面と同じような経験がないか、探してみることです。親子それぞれ考えてほしいです。なかには全く思い浮かばない子もいますので、その場合は、親御さんがご自分の似た経験を先に話してあげると、「ああ、そういうことか!」と理解できることも多いです。
ここでの注意点としては、
心に残った場面→自分の似た経験→親に聞いた話(=親の似た経験)
をワンセットとします。最初に挙げた心に残った場面をチェックして、似た経験がみつからない場合、ネタとしてつかわないようにします。
こうすると、最初に挙げた心に残った場面が、ずいぶん厳選されてくるのではないでしょうか?
また、この物語ほどのサバイバル体験は、ふつう経験したことがなくて当然。ですから、似た経験がない!という子も多いと思います。その場合は、
もし自分だったら? と、似た経験の代わりに想像した話を使うのも手です。
先に挙げた心に残った場面について、それぞれ、似た経験と聞いた話を加えてみました。赤字が似た経験、青字が聞いた話、ピンクがもし~だったらです。参考までに。
- いちばんいいなあと思ったのは、ミヤには仲良しのおじいちゃんがいることです → 私には、おじいちゃんがいません。母のおばあちゃんだけ、生きています。それも近くに住んでいないので、年に2回会えればいいくらいです。 → お母さんは、おじいちゃんおばあちゃんと一緒に暮らしていたそうです。一緒に暮らすとケンカばかりしてしまうので、たまに会うくらいがかわいがってもらえていいのよ、と言います。
- いちばんよかったと思ったのは、ロビー・マクロードが無事にアメリカで幸せに暮らせたところです → 自分がやっているゲームで、無事に死地を乗り切ったときのような、ほっとした気持ちとやったぞという達成感がまじったような、満足感がありました。 → お父さんは、子どものころ遠くの知らない町まで遊びにいってしまったそうです。帰り道で迷ってしまい、家に帰れるのか不安で泣きそうになったらしいです。やっと見慣れた景色が目に入って、ほんとうにほっとしたそうです。
- いちばんすごいと思ったのは、12歳のロビー・マクロードがひとりで生きて行こうとしたところです → もし自分がひとりで生きていくとしたらできるだろうかと考えてしまいました。お兄ちゃんは今12歳だけれど、ロビー・マクロードのように腐った肉を食べたり、盗みを働いたりできるのだろうか? → お母さんはこう言いました。「生きるためだったら、もしかしたら、人は道徳心なんてなくなってしまうのかも。衣食足りて礼節を知るということわざがあるのも納得だわ」と。
- いちばんかわいそうだと思ったのは、ロビー・マクロードとオオカミとの別れの場面です→ 私にも似た経験があります。私は小さいころ犬を飼っていました。お父さんの転勤で東京に引っ越してくるとき、犬を連れてくることができませんでした。犬を飼いたいと言ってくれた人に譲ることになりましたが、私はいつまでも離れることができませんでした。 → おばあちゃんは、母が進学して家を離れるときに、同じような気持ちを味わったそうです。もう一人立ちさせなくては、子離れしなくては、そう思うものの、母がいなくなることがさみしくて仕方なかったそうです。
いかがでしょうか? 作業できたでしょうか?
実際に感想文を書くときは、
あらすじ → ネタ →まとめ
という流れで書いていきます。
ネタがひとつだけでは字数が足りない、内容が貧相だ、という場合は、もうひとつネタを追加します。
あらすじ → ネタ1 → ネタ2 → まとめ
という構成になってきます。
まとめてみよう
最後の段落は全体のまとめになります。
ネタを通して共通するテーマを見つけるのがコツ。
中学年では、まだ全体を見通せる力はそれほど身についていないのがふつうです。
ですから、親御さんがヒントを与えてうまく誘導してあげるとよいですよ。
この本は、どこに着目するかでまとめの内容もガラッと変わってくる可能性があります。
子どもの思いも尊重しながら、かっこいいまとめを目指してもらえるといいですね。
参考例
この物語は、初めてパソコンを使うことになったマイケル・マクロードさんが、自分の家系図をたどってみるところから始まります。その結果、ある遺言状にたどり着きます。その遺言状には、「最後のオオカミ」と題して、スコットランドの最後のオオカミとマイケル・マクロードさんの祖先であるロビー・マクロードさんの生死をさまよう冒険について書かれていました。
この本を読んで、私が心に残った場面はふたつあります。ひとつめは、ロビー・マクロードが最後のオオカミと出会うところです。12歳のロビー・マクロードが一人で生きようと決意し、いつもひとりきりで、生きるためにがむしゃらに頑張ってきました。お父さんの顔もお母さんの顔も見たことがない子です。ロビー・マクロードが、目の前で母オオカミを亡くした子どもオオカミに、自分と似た者同士だと思ったのも納得できます。私は、お父さんもいるしお母さんもいます。朝起きればご飯ができているし、あったかいお布団も、一緒に会話のできるきょうだいもいます。家にひとりでいることは、あまりありません。とくに夜は、かならず誰かが家にいます。ロビー・マクロードは、家もないし、家族もいないし、友達もいないのです。どんなにさみしかっただろうと思うし、だから、最後のオオカミと強い絆で結ばれたのだろうなと思いました。母は、子どものころ、ネコが友達だったそうです。おじいちゃんもおばあちゃんも帰りが遅くて、毎日ネコとお留守番していたので、ネコがいなかったらどんなにさみしかったか想像もできないと話してくれました。「もしネコがいなかったら、ひとりで家にいるのがさみしくて、悪い子になって遊び歩いていたかもしれない」そう言いました。そのくらい、夜に家でひとりぼっちはさみしかったようです。
ふたつめは、ロビー・マクロードとチャーリー(最後のオオカミ)の別れの場面です。野生に戻さなくてはという気持ちとまだまだ一緒にいたいという気持ちのあいだで揺れるのが、痛いくらい伝わってきました。私にも似た経験があります。私は小さいころクロという犬を飼っていました。お父さんの転勤で東京に引っ越してくるとき、クロを連れてくることができませんでした。クロを飼いたいと言ってくれた人に譲ることになりましたが、私はいつまでも離れることができませんでした。おばあちゃんは、母が進学して家を離れるときに、同じような気持ちを味わったそうです。もう一人立ちさせなくては、子離れしなくては、そう思うものの、母がいなくなることがさみしくて仕方なかったそうです。
私は、この物語を読んで、家族の絆とは深いものなのだなあと感じました。家系図を調べようと思ったマイケル・マクロードさんも、チャーリーとほんとうの家族のようだったロビー・マクロードも、母とネコも、私とクロも、おばあちゃんと母も、みんな家族という居場所がなくてはならないものだったのだなあと思います。もしかしたら私も、おばあちゃんと母のように、あと10年もしたらお別れかもしれません。いま、いっしょにいるこの家族を、大切にしたいと思いました。
この本をすすめたい子
この本の内容は、かなり深いです。
人間の醜い部分も多々描かれています。戦争なども描かれているため、かなり深いテーマで書くことも可能です。
感じ方はそれぞれなので、もしかしたらこのお話が苦手だという子もいるでしょう。生理的に読む気がしない、そんな子がいてもおかしくないと思います。
社会的な視点でものごとを見ることのできる子にはオススメ。
日頃からニュースに興味がある子、特に子どもの虐待についてなど。
また、オオカミの扱われ方に関しては、動物保護に興味のある子には、なにか感じることができる一冊かと思います。
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