みなさん、こんにちは!
作文講師の菅野恭子です。学習塾シンクスで作文クラスを担当しています。
毎週土曜日はシンクス東品川教室の作文クラス開校日です。
先日の土曜日、入会したての小4の男の子が、初めての感想文にチャレンジしました。
ノーベルの伝記からの抜粋で感想文を書く
入会した学期は、ひとつ下の学年の教材で学習していきます。
というわけで、この子は、小3の教材。
小3の2学期(7月~9月)は、ノーベルの伝記を読んで感想文に取り組みます。
文字数にして、1000字強。ノーベルの伝記から抜粋した一場面を読み取り、感想をまとめていく練習です。
どんな内容かというと、
ノーベルの幼少期、家庭はとても貧しくて、母と息子3人がつつましく暮らしていた。子どもたちは、マッチ売りの少女のように、マッチを売って小銭を稼ぐこともあった。ある雪の日、母は、兄弟のひとりロベルトにお遣いを頼んだ。ところが、ポケットに穴があいていたせいで、硬貨は雪の中に落ちてしまったようで、目的のパンと酢漬けニシンを買うことができなかった。帰宅してうなだれるロベルトに母は、「雪の中に貯金したと思えばいいじゃないの」と優しく言い、母子4人は、スープだけの食事をすませた。貧しいけれど、温かい家庭だった。
というもの。
感想文の肝、自分の体験談
感想文を書くときの流れは、つぎのように指導しています。
- いちばん心に残った場面を挙げる
- その場面と似た体験を書く
- 家族などの似た体験を書く(聞いた話)または、もし〇〇だったら…(想像した話)
- まとめ
なによりポイントになるのが、似た体験。
「わかる、わかる! 自分も同じようなことがあった!」
「自分も同じことがあったけど、そうは考えなかったなあ」
など、似た体験に結びつけることができると、自分事として考えることができます。
感想文を書くとなると、あらすじを書いてしまう子も多いです。
それは、書き方がわからないから。
まずは、似た体験を思い出してみましょう。
すぐには思いつかないかもしれませんが、あきらめずに探してみましょう。
そして、つぎにやること。
お父さんお母さんといった身近な人に、同じような体験をしたことがないかインタビューもしてみてください。
どうしても自分の体験が見つからない場合は、先に家族にインタビューする手もあります。
「ああ、こういうこね。それなら自分にもある!」
と、理解できることがありますから。
この長文の場合、注目されるポイントは
ノーベルの幼少期を描いたこの長文。
多くの子が注目する部分は、つぎのようなところです。
- 貧しくてかわいそう
- 子どもなのにマッチ売りしないといけないんだ
- うちのお母さんだったら、絶対に怒る
みっつめの、「うちのお母さんだったら絶対に怒る」は、どの子も言いますね(笑)
似た体験として書くことが多いのは、
- 自分もお遣いに行ったことがある
- 自分も失敗したときに咎められなかったことがある
- 家族みんなでご飯を食べるときはあったかい気持ちになる
こんなところでしょうか。
お金があるからいけないんだ!
今回この長文で感想文にチャレンジした、先に紹介した小4の男の子。
残念ながら似た体験が思いつきませんでしたが、個性あふれる驚きの内容に!
書き始める前の対話で、
- お母さんがかわいそう
- かわいそうなのは、貧乏なせいだ
- お金がなければ、貧乏にもならない
- お金があるのが悪い
- お金がない世界だったら、みんな幸せに暮らせるのに
と、この長文を読んで頭に浮かんだことを話してくれました。
お金があるから悪い。お金のない世界になればいい。
この考え方は、長年教えてきて初めて触れるものだったので、はっとしました。
そうかあ、そういう考え方もできるね、とさらに聞いてみると、
なんでお金ってできたんだろう? だれが作ったんだろう? 作った人がバカだ。
と。強い感情が出てきたんですよね。
この疑問を、彼はいつか解決する日がやってくるかもしれません。
感想文は考える力を養うのにぴったり
感想文に何の意味があるの?
そう言う方も多いのですが、彼の一例をみただけでも、取り組む価値は十分にあると思います。
自分は何に興味があり、何が問題だと思っているのか。
こんなこと、なかなか考える機会はありません。
これからの時代、覚える勉強から考える勉強へと、求められるものも変わってきます。それも、だれかの受け売りでなく、自分の頭で考えるのが大切ですよね。
考える力をつけるのに、感想文はうってつけの学習なのです。
夏休みの感想文でイヤな思いをしているせいか、みなさんの感想文へのイメージがよくないことがほんとうに残念です。
先入観を捨てて、感想文は考える力を育てる勉強だと考えてほしいなあと切に思います。