みなさん、こんにちは。
作文講師の菅野恭子です。学習塾シンクスで作文クラスを担当しています。
2019年の中学年向け課題図書「子ぶたのトリュフ」で感想文の書き方を解説いたします。
「子ぶたのトリュフ」で感想文を書いてみよう
課題図書も何冊かありますので、どれで書いたらよいか迷ってしまいますよね。
「子ぶたのトリュフ」の内容が気になる方に、簡単に内容をご紹介したいと思います。
子ぶたのトリュフってどんな本
物語の舞台は、イギリスの農場。
たくさんの動物に囲まれて生活する女の子、ジャスミンが主人公です。
ある日のこと、ジャスミンはほかの農場で生まれたての子ぶたたちを見ていたのですが、1匹だけ、今にも死にそうな弱々しい子ブタがいました。どうせ死んでしまうからと見殺しにしそうな飼い主さんの態度に、この子を助けられるのは私しかいないと感じたジャスミンは、こっそり家へ持ち帰り、トリュフという名前をつけます。
夜中に何度も起きてミルクをあげたり、かいがいしくお世話をしたおかげが、トリュフは元気を取り戻します。賢いトリュフは、ジャスミンの言うことをよく聞く子に育ちますが…豚は家畜であり、ペットにはなれません。いずれ、さよならしないといけません。
トリュフをじょうずに育てたジャスミンは、自分は動物を育てる才能があると思い、将来、動物救護センターやペットホテルをやろうと考えます。そんなジャスミン、友だちのモルモットを預かるのですが……モルモットの入ったかごの扉が開いてしまい、モルモットが逃げ出す事件が発生! ジャスミンはモルモットを無事に見つけることができるのか!?
「子ぶたのトリュフ」はこんな子におすすめ
「子ぶたのトリュフ」は、こんな子にとって共感できる一冊かと思います。
- 動物が好き&興味がある
- 自然のある環境が好き
- 将来の夢がまだ見つからない
- 自分の得意な分野について、教えてと言われたり頼まれたりしたことがある
- 無理だと思うこともあきらめずにいたら、願いがかなったことがある
- こっそり生き物を家に持ち帰ったことがある(今はあまりいないかな?)
- ペットのお世話をしている
動物が好きな子には、間違いなく楽しく読める一冊だと思います。特に、動物園に行くことが好き、動物の生態が好きという、特定の動物でなく生き物が好きだという子にはおすすめ。
中学年くらいになると、ペットを飼いたい子も増えてきますね。自分でちゃんとお世話をすることを条件に飼うことを許してもらう子も多いでしょう。自分でお世話をしたことがある子にとっても、「子ぶたのトリュフ」は共感できる内容です。
また、主人公のジャスミンは、動物が好き・動物のお世話が好きという自分の特性を理解し、将来は動物に関する仕事をしようと考えています。同様に、将来は自分の得意なことを仕事にしたいという夢がある子にとってもオススメできます。
感想文の流れ
感想文の流れは、つぎのようにしましょう。内容ごとに大きく4つのまとまりにすることを意識してみてください。
- 本の紹介&この一冊を読んでいちばん心に残ったところをあげる
- 自分の似た経験(反対の経験でもOK)
- 自分の似た経験 もしくは 家族などに聞いた話 もしくは想像した話
- 全体の感想
感想文のお悩みで最も多いのが、あらすじしか書けないというもの。1200字を書くとなると、あらすじを書かないと文字数を稼げないというのも理由かと思います。
感想文は、あらすじを書くのではなく、共感した内容と同様の自分自身の体験を書くことで字数を増やしていきましょう。
では、それぞれ詳しく説明していきます。
「第一段落 いちばん~は~です」
まずは、簡単に本の紹介をしたあとで、感想文の中心を決めていきます。一冊の本を読むと、惹かれる場所がたくさんあると思うのですが、全体を通して1本の筋が通るように意識して、いちばん印象に残ったことを取り上げます。
「いちばん~は~です」とは、いちばん心に残ったところを決める作業と捉えてください。なにを選ぶのかが、まずは大きなポイントになります。
どんなところを選ぶかによって、つぎに続く自分の体験が変わってきますから。
たとえば……
- いちばんおもしろいと思ったのは、トリュフがどんどんいい子に育っていくところです
- いちばんいいなあと思ったのは、ジャスミンが、立派な将来の夢を持っていることです
このように、中心を絞っておくと、よくあるお悩み「あらすじばかり並べてしまって」という事態を避けることができます。
本を読む段階で候補となる場面に付箋を貼っておくとわかりやすいですよ。記憶に残る場面というのは一カ所だけではありませんよね。いくつか候補をあげておき、その中から、自分の似た経験があるものや聞いた話が書けそうなものを選ぶと書きやすいです。(似た話や聞いた話についてはこのあと詳しく説明しますね。)
どんな場所に付箋を貼ってあるか、親御さんが見たときに、その子が興味を持つ傾向が把握できると思います。上手にヒントを出して、その傾向を気づかせてあげるとよいです。
第二段落では似た経験を書こう
先ほど決めた「いちばん~」に合わせて、自分の似た体験を書いてみましょう。いちばん印象に残ったところをあげたのですから、関連する話題を広げていきましょう。
たとえば、
「いちばんおもしろいと思ったのは、トリュフがどんどんいい子に育っていくところです」を選んだ場合、自分も飼っているペットを躾けた経験を書きます。
- トイレのしつけがとても大変だった
- おすわりやお手などの芸を教えてあげた
などの経験があるのでは?
また、「いちばんいいなあと思ったのは、ジャスミンが、立派な将来の夢を持っていることです」を選んだとしたら、
- 自分も将来の夢があるけど、得意なことでもないし、大きな夢でもない
- 得意なことがないので、将来の夢もみつからない
など、反対の経験を書くのもおもしろい試みになります。
ポイントは、第一段落に書いた「いちばん~」と関連する自分自身の経験を書くことです。
第三段落はもうひとつの似た話または聞いた話
第三段落では、第二段落に続き似た話を書きます。似た話をふたつ書くのも大変なので、できれば、お父さんやお母さんなどに聞いた話を書くことをおすすめします。
その場合も、第一段落の「いちばん~」に合わせると、統一感のある内容になります。
たとえば、第一段落・第二段落に、実際に生き物のお世話をすることの大変さや難しさを書いた場合、
お母さんは子どものころ、拾ってきた子猫を育てようとしたことがあるそうです。今は、ネットで調べたら育て方などが簡単にわかるけれど、お母さんが子どものころは、どうしていいかわからなかったそうです。バスタオルにくるんだり、いろいろとやってあげたけれど、結局、数日で死んでしまいました。お母さんは、とても悲しかったそうです。
などの話題を書くとよいでしょう。
また、ここまで将来の夢で書いてきたとしたら、ぜひこの段落は、お父さんやお母さんに聞いた話を書いてみましょう。
お父さんやお母さんも子どものころは将来の夢があったはず。実際に、夢は叶ったのか、途中で変わっていったのかなどを聞いてみるのもよいでしょう。
もしも、似た経験やお父さんお母さんから聞いた話も入れることが難しい場合、
「もし~だったら」という想像した話を書いてみましょう。
たとえば、
「もしわたしがジャスミンだったら」と想像してみます。この本は主人公に共感しやすい内容ですから、想像した話の方が書きやすい子もいるかもしれません。
第四段落は全体のまとめ
最後の段落は、全体のまとめになります。
第一段落から第二段落、そして第三段落と、共通する点を探り、うまくまとめてみましょう。
全体を通してまとめるという作業は、3,4年生にとっては難しいことです。大人のように俯瞰してみる力が、まだ成長の途中にあるからです。
ですから、つたないまとめになる場合もあるかもしれません。思ったことがしっかり入っていればよしとしましょう。
たとえば、
- いちばんいいなあと思ったのはジャスミンには大きな夢があることだ
- 私にはまだ夢がない 自分が得意なこともよくわからない
- お母さんは子どものころ、アイドルになりたかったそうだ
こんな流れで書いてきたとします。
その場合、まとめの第四段落では、
自分には、まだまだ芽の出ていない才能もあると思う。ジャスミンのように、子どものころに得意だったことが仕事になる子もいれば、私のお母さんのように、とんでもなく似合わない夢を持つ子もいるみたい。わたしは、ゆっくりと将来の夢を探していきたいと思います。
こんなふうにまとめることもできそうです。
「子ぶたのトリュフ」感想文の参考例
私がこの本を選んだのは、動物が好きだからです。動物園に行くのも大好きだし、動物の物語もよく読みます。ぶたを飼うというのがおもしろいと感じて読みたくなりました。ジャスミンという農場に暮らす女の子が、子ぶたのトリュフを育てるお話です。ジャスミンは動物のお世話をするのがとても上手で、今にも死んでしまいそうなトリュフを、心を込めてお世話をしました。そのおかげでトリュフは、とてもかしこい子ぶたに育ちます。動物好きなジャスミンは、将来は動物救急センターとペットホテルを作ることが夢です。私は、この本を読んでいちばんうらやましいと思ったのは、ジャスミンが自分の得意なことで将来仕事をしようしていることです。
私は、今のところ将来の夢がありません。保育園のころは、
「大きくなったらプリンセスになる
なんて言っていました。でも、4年生になった今、プリンセスになる夢は現実的ではないとわかっています。将来の夢は? と聞かれても、いつも答えることができません。どうしてかというと、私は、得意なことがないからです。だから、ジャスミンが動物のお世話が得意なのを生かして、将来は動物救急センターを作ろうと夢みているのが、すごいことだし、うらやましいと思ったのです。私の友達も、デザイナーになりたいとか、歌手になりたいとか、ちゃんとした夢があります。夢の話になると、もじもじしてしまう自分がいやだなと思います。
お母さんは子どものころ、どんな夢があったのだろうと思いました。そこで、お母さんに聞いてみて、私はとてもおどろきました。お母さんは、なんと、アイドルになりたかったと言うのです。私は、なにも言えませんでした。開いた口がふさがならいというのは、こういうことを言うのだろうと、ふと思いました。お母さんは、とても音痴なのです。
「アイドルって、昔も歌を歌ってたんでしょ? お母さん、音痴なのに」
と言うと、
「そうよ。子どものころは、自分が音痴だなんて思ってもみなかったのよね。教室の黒板の前をステージにして歌ってたもん」
と、わらいながら言いました。それを聞いて、得意なことじゃなくても、夢にしていいのだなあと思いました。ちょっとお母さんに失礼かもしれませんが。
私には、得意なことがありません。でも、これから得意だとわかることや、まだまだ芽の出ていない才能もあると思います。ジャスミンのように、子どものころに得意だったことが仕事になる子もいれば、私のお母さんのように、とんでもなく似合わない夢を持つ子もいることがわかりました。わたしは、ゆっくりと将来の夢を探していきたいと思います。