みなさん、こんにちは。
作文講師の菅野恭子です。学習塾シンクスで作文を教えています。
今日は、日本文化論について、お話ししてみようと思います。
日本文化論というと、なにやら難しく聞こえるかもしれませんが、いえいえ、そんなことないんですよ。
ちょっと考えてみてくださいね。
「人目を気にする」「遠慮する」「空気を読む」……
日本人にはおなじみの言葉ですね。
では、
「この意味を説明してみて」
そう言われたら、う~ん、なんて説明したらいいのだろう…と悩んでしまいそうじゃないですか?
こういった日本人の価値観を表しているような言葉たち。実は、外国人が日本語を学ぶときに苦戦するところなのです。
それもそのはず、私たち日本人でさえ、そのニュアンスを上手に伝えるのは、かなり難しいですものね。
言葉と文化は密接な関係がある
ノーベル平和賞を受賞したケニアのワンガリ・マータイさんが感銘を受けたことで注目された「もったいない」という言葉。
この「もったいない」も、単に「wasteful」と英訳するだけでは語りつくせないニュアンスがあると考えられます。
日本人にとっては、幼いころから当たり前のように使う「もったいない」と言う言葉には、日本人らしさがぎゅっと詰まっているのです。
言葉と文化には、切っても切れない関係があります。言語を学ぶ際には、その背景の文化まで知ると、言語自体もぐっと理解できるようになりますものね。
当たり前すぎてわからない
自分のことは、意外とわかりません。人に指摘されて初めて気が付くこともよくあります。
それと同じで、日本人には当たり前すぎて意識することのない日本らしさや日本人らしさも、外国人に指摘されて初めて、その特徴に気付いたりします。
中学生のみんなは、外国に行った経験もまだない子がほとんどでしょうし、外国人と接する機会も、それほどありませんよね。
客観的に外から日本を見た経験がないし、他の国と比べる経験もないわけです。日本文化とは何か? とか、日本人らしさとは何か? と言われてもピンと来なくて当然でしょう。
まずは意識してみよう
そういった状態だというのに、受験問題では、日本文化についての論説文が出題されることも多いです。都立高の入試では、そういった論説文をもとに、200字作文が課されていますしね。
ですから、日本らしさってなんだろう? 日本人らしさってなんだろう? と、日頃から意識することが大事なのです。意識していると、アンテナが立ちます。すると、日本文化についての情報がひっかかってくるようになります。
日本文化についてのニュースだったり、ちょっとした文章だったり、いつもならスルーしてしまうことが、頭の中に残ったりします。
難しくて意味のわからない論説文を読んでいるときに、
あ、それ見たことある! あ、それ聞いたことある!
という状態と、
なんだ、この言葉。見たことも聞いたこともないぞ。
という状態とでは、断然、前者のほうが理解できるし余裕をもって取り組めると思いませんか?
コインの表裏とおなじ
物事には、かならず表と裏がありますね。
長所と短所は紙一重というように、よいと考えられる面も、視点を変えれば悪い面に変わります。
文化論も同じです。自国の文化に誇りを持つことは決して悪いことではないのですが、どういうわけか悪い面にばかりスポットライトがあたりがちです。
外国はこんなに〇〇なのに、日本は〇〇だ、だの、日本は○○だからダメなんだ、だの。
でも、先に述べたように、長所と短所は紙一重ですからね。
「もったいない」のように、外国の方が感銘を受けるような素晴らしいものもあるわけです。
ですから、悪い面ばかりを主張した文化論を読むと、こんなダメな国に住んでるわけか…とがっかりしてしまうかもしれません。書いてあることを鵜呑みにしないことが大切です。
また、悪いことが書かれていたら、反対の面を探ってみることもオススメ。
中学生の意見文で是非の主題を勉強している子ならわかると思いますが、「~はよい」という意見もあれば、その反対に「~は悪い」という意見もあります。
反対の立場だったら……という想像をしてみると、また違った一面に気付くことができます。
★是非の主題を用いた中学生の意見文の書き方はこちらをごらんください。
こういう姿勢こそが、自分の意見を形作っていきます。
日本人らしさを考えるおすすめ図書
日本文化論は、易しいものから難解なものまで、さまざまな図書があります。
中学生にもわかりやすく、興味を持って読めそうな一冊をご紹介したいと思います。
『日本人の心がわかる日本語』(森田六朗著 アスク出版)
この本は、外国人が日本語を学んだり、日本語教師が外国人からの質問に答えたりするために書かれた本です。
冒頭で、日本人におなじみの「人目を気にする」「遠慮する」「空気を読む」などの言葉の背景にあるニュアンスを上手に解説してくれている一冊なのです。
日本人の感性、価値観、生活感覚、コミュニケーションのとりかたなど、はっと気づかされることも多く、楽しく読むことができると思います。
タイトルにあるとおり、まさに、日本人の心がわかる日本語を集めたものになっています。
夏休みもまだ2週間残っていることですし、余裕のあるときにこういう本を読むのもよいですよ!
興味のある子は、図書館の日本語教育コーナーをのぞいてみると、このようなタイプの本が並んでいます。おもしろい一冊との出会いがあるとよいですね。