受験対策

受験作文の書き方 「読書が与えてくれるもの」

みなさん、こんにちは!

作文講師の菅野恭子です。学習塾シンクスで作文クラスを担当しています。

 

みなさんは読書は好きですか?

日ごろから自分はよく本を読む方だと思いますか?

2017年の文科省の調査では、不読率(1か月で読んだ本の冊数が0冊の生徒の割合)は、小学生で1割未満、中学生になると約1~2割とのこと。まったく読書をしないというお子さんも珍しくはないということですね。

受験作文には、読書がテーマの課題もよく見られます。

たとえば、2017年度の東京都立中高一貫校(大泉・小石川・富士・武蔵)の共通課題では、

「読書が与えてくれたもの」

が出題されています。

今回は、「読書が与えてくれたもの」を一例に、書き方の流れを解説していこうと思います。

書き方の流れ

基本的には、四段落での構成にしていきましょう。また、常体(だ・である)で書くようにします。

第一段落は導入部にあたります。自分の日常において読書が果たす役割や、自分にとって読書とは? といったことを書いていきましょう。それほどボリュームはいりません。

第二段落、第三段落では、具体的に「読書が与えてくれたもの」について、自分の体験をふまえて述べていきます。

第四段落では、全体のまとめ。第二段落、第三段落で述べたことをもとに、読書についての考えをまとめていきます。この段落で、将来の展望について触れることができるとよいですね。

流れがイメージできたら、それぞれの段落について、詳しく考えていきましょう。

第一段落では、テーマについて軽く触れてみる

与えられたテーマは、「読書が与えてくれたもの」ですから、そのテーマについてのエピソードや、思いについて、軽く触れてみましょう。ここは、導入部分となりますので、次を読み進めたくなるような内容が書けたらしめたもの。

 

読書に対するイメージや、読書の効能。また、自分の学校でどのくらい読書が重要視されているかといったエピソードも選択肢のひとつになるでしょう。

そして、第二段落へスムーズにつながるよう、「読書が与えてくれたものは次の二つだ。」という文を入れておくようにしましょう。書かされているような気持ちになるかもしれませんが、その気持ちはいったん脇に置いて、書き方のルールとして覚えておくことをお勧めします。数学の公式のようなものです。

書き方の一例を挙げておきますね。

私は読書が好きだ。勉強の一環として読書をするという意識の友達も多いが、私の場合、読書は趣味だ。幼いころから遊びの一つとして、読書はいつも私の日常にあった。本は友達と言ってもいいくらいだ。読書から与えられたものは、数えきれないくらいあるが、その中でも次のふたつは読書から与えられた恩恵だと思う。

では、第二段落へ進みましょう

第二段落は具体的に

第一段落の終わりに、「読書が与えてくれたものは次の二つだ。」と書きました。

ということで、第二段落にひとつめの読書から与えられたもの、第三段落には、ふたつめの読書から与えられたものを書いていきます。

このとき肝心なのは、自分自身の体験談を添えること。体験談が加わって初めて、説得力のある内容になります。口先ばかりで行動が伴わない人が信用ならないのと同じですね(笑)

まず、読書から与えられたものを考えなくてはなりません。あなたは、読書を通して何を得てきましたか?

  • 想像力
  • たくさんの人の人生を疑似体験
  • 豊かな時間
  • 生涯の友
  • 生き方の指針
  • 言葉の力
  • 様々な思考に触れる

読書に慣れ親しんでいる子は、ちょっと考えただけでもいくつも浮かんできそうですね。

ひとつめの読書が与えてくれたものを提示し、それに続けて自分の体験談を書く。この流れで書いていきましょう。

たとえば、このようなイメージです。

まずひとつめは、たくさんの人の人生を味わう経験ができるということだ。私は低学年のころ、伝記を読むのが大好きだった。図書館の伝記コーナーは読破したくらいだ。伝記を通して、立派な功績を残した偉人の人生や考え方を知ることができた。自分に似ていると思える部分もあれば、自分はまったく持ち合わせていない部分もあり、人間とはひとそれぞれこんなにも違うものかと驚いたものだ。人間の数だけ考え方も感じ方も違うということを実感することができたのは、読書のおかげだ。

さて、つぎは第三段落。ふたつめの読書が与えてくれたものについて。

第三段落は、ふたつめの読書が与えてくれたもの

書き出しは、「ふたつめとしては、」がよいでしょう。

では、ふたつめは、「豊かな時間」とします。

こんな内容で書き進めることができそうです。

ふたつめは、豊かな時間だ。私は、休日の午後、それも雨の日など、家で読書をするのが何よりの楽しみだ。そんなときは小説を読む。主人公に感情移入しすぎて涙なしでは読めないような小説を読むのが好きだ。暇だなあ、なんか楽しいことないかなあ、と休日を持て余している友人もいるが、読書が好きな私は、そう思ったことがない。暇な時間があれば喜んで本を読むからだ。悲しいときや落ち込んだときも、読書が癒してくれる。とても豊かな時間を与えられているのだ。

ここまでで、読書から与えられたものと、その具体的な体験を挙げることができました。

そのふたつを眺めてみて、なにか共通することはないでしょうか。共通点は難しくても、握手するくらいの親和性はあるはず。または、磁石のS極とN極がくっつくように、正反対の内容を結び合わせるというのも考えられますよ。

自分の書いたものをじっくり考えてみましょう。

ということで、最後の第四段落へ進みます。

第四段落で有終の美を飾る

第二段落と第三段落の共通点、みつかりましたか?

第四段落は、最終的なまとめ。

特に、第二段落と第三段落で具体的に述べた「読書が与えてくれたもの」をもとに、

読書のおかげで私はこんなに素敵なものをもらったよ!

と、端的に述べてみましょう。

そして、今後も、読書とどのように関わっていきたいか、また、関わることで自分がどうなっていけるのか、将来の展望も加えるとさらによい内容になります。

参考例を考えてみると……

  • たくさんの人の人生を味わうことができる
  • 豊かな時間を持つことができる

というあたりから、このふたつを結びつけてみることができそうです。

そうですね。

人生100年時代と、最近いろいろなところで目にする。仮に100年になったとしても、味わえる人生は私自身のものだ。でも、読書のおかげで、私は、様々な人生とそこに生まれる感情を味わうことができる。きっと、この豊かな時間は、この先も一生楽しめるだろう。なぜなら、読書はすでに私の一部だからだ。読書の楽しみに触れることができたことは、私の大きな財産だ。これからもさらに本を読み、豊かな人生を歩んでいきたい。

力技でまとめた感もありますが(笑)

第四段落で自分の考えをしっかり示すことができれば、全体的なイメージもあがります。(評価するのも人間ですから、実際、そういう面があります)

ですから、最後は手を抜かないこと。

凝り過ぎでテーマから離れてしまわないよう気をつけてくださいね。

テーマは、

「読書が与えてくれたもの」

ですから、これに対する答えになっていることが大前提です。

 

添削します

もし、この記事を読んで、作文を書いた方。

作文は、自分自身で評価することが大変難しいですね。ほかの教科のように丸をつけてはい〇〇点です、というわけにはいきませんから。

他者に見てもらうことが必要になってきます。だから、独学で作文を学ぶことは難しいのです。

添削してほしいという方がいたら、下の問い合わせフォームからご連絡ください。






    おまけ:読書のすすめ

    受験作文には、読書について書かせるものがわりと多いです。それだけ読書が重要視されていることでもあるでしょうし、読書の習慣がある生徒が欲しいということでしょう。

    受験のために読む、国語の成績をあげるために読む、という人もいるでしょう。

    でも、勉強のためと限定してしまってはおもしろくありません。

    読書は、勉強にならない無駄(と思わされている)な世界を知るために読むような場合の方が断然おもしろいです。

    私の祖父は本の虫で、純文学から政治といったお堅い本から、推理小説といったものまで、様々なジャンルの本が家にあふれていました。大人の小説には、いわゆる「子どもは見ちゃいけません」という内容も多くて、それをこっそり読むのが大好きでした。本を読むことがおもしろいと思えるようになったのは、あの、こっそり読んだ小説たちの影響があるように思います。小学校の学級文庫にあるような児童文学の世界だけでは知りえることができなかった読書のおもしろさでした。

    本が一冊あれば、ああ暇だ、なんて愚痴を言うこともありません。勉強のための読書では、そうはいかないでしょう。

    まずは、読書のおもしろさを実感できるような本に出合ってほしいなあと思います。

    以上、おまけでした。

     

     

    ABOUT ME
    きょうこ先生
    2003年より作文指導に携わる。東京(品川)横浜にて対面指導。 現在はオンラインをメインに、愛媛県松山市にて対面指導を行っている。長く続けてくださる生徒さんが多いのが自慢!(平均5〜6年。最長は13年!) 作文がスラスラ書けるようになった、国語の成績がぐ〜んと上がったという声はもちろんのこと、自分の意見が言えるようになった、コミュニケーション力が上がった、親子の会話が増えたなどの声も多くいただく。