みなさん、こんにちは。
作文講師の菅野恭子です。学習塾シンクスで作文クラスを担当しています。
受験で作文が課される生徒さんは、自主的に作文の練習に取り組んでいることと思います。私の担当する受験コースの生徒さんも、毎週の課題とは別に、ご自宅での練習にも励んでいます。
作文を課す学校の場合、作文の配点の割合が高いこともあり、保護者のみなさんは、
「どうしたら合格レベルの内容を書けるようになりますか?」
と口々におっしゃいます。
その方法のひとつは、やはり、たくさん書いてみることです。作文の書き方の本をたくさん読んだところで、実際に書いてみなければ、なかなか身に付きません。実際に考え、そして書いてみる。面倒なようですが、これがいちばん効果的だと私は思います。
というわけで、ご家庭での練習用に使っていただけそうなテーマについて、書き方を解説していこうと考えています。
尊敬する人は?
「最も尊敬する人は誰ですか。その人はあなたにどのような影響を与えましたか。」
都内私立中、帰国生対象の過去問です。ずばり同じ内容で出題される可能性は高くないでしょうが、自分自身について探ることができる課題です。じっくり考えながら取り組んでみてください。
書く前の準備としては、まず、尊敬する人を特定しなくてはなりません。
尊敬する人はだれ? と聞かれたときに、まったく思い浮かばないという子も少なくありません。
まずは、身近なところで両親。
特にスポーツなど、何か打ちこんでいるものがあれば、その道において尊敬する人でもよいでしょう。歴史好きな子なら、歴史上の人物というのもありですね。
この課題では、「最も尊敬する人はだれか」と聞いています。
最も、とありますから、適当に選ばないように気を付けてましょう。
尊敬しているということは、少なからず何らかの影響を受けていることでしょう。また、あの人のようになりたいと具体的に真似をしたことがあるかもしれません。
構成は?
構成は、四段落または三段落で書いてみましょう。
四段落構成の場合
- 導入(私が最も尊敬する人物は〇〇だ)
- 尊敬する理由 その1 + 体験(影響を受けたことや真似をしてみたこと)
- 尊敬する理由 その2 + 体験や聞いた話(自分の体験談のほかに周囲の人に聞いた話)
- まとめ(尊敬する人物とはどういう存在か)
三段落構成の場合
- 導入(私が最も尊敬する人物は〇〇だ)
- 尊敬する理由 その1 + 体験(影響を受けたことや真似をしてみたこと)
- まとめ(尊敬する人物とはどういう存在か)
では、第一段落から始めていきましょう。
第一段落の書き方
まず第一段落は、導入にあたる部分です。
「私の最も尊敬する人は、○○だ。」
この一文が柱になります。尊敬する人物について、少し説明を加えてもよいでしょう。
たとえば、野球をやっていてメジャーリーグで活躍している大谷選手を尊敬しているとしましょう。その場合、
「私の最も尊敬する人は、メジャーリーグの大谷翔平選手だ。」
が柱になります。そのあとで、
「大谷選手は、投手と打者の両方で活躍する、プロ野球の世界ではとても珍しいタイプだ。」
などの解説を付け加えるイメージです。
では、第二段落に進みましょう。
第二段落の書き方
第二段落では、なぜ尊敬しているのか、その理由を書きます。また、理由を裏付ける体験として、どのような影響を受けたかについて書いてみましょう。
また、先ほどの大谷選手を例に出して具体例を挙げますね。
【理由】 自分が決めた目標に向かって努力するところが素晴らしいから
【体験】 大谷選手が目標達成のために計画を立てコツコツ実行していることを知り、なんとなく練習していた自分を反省した。大谷選手を見習って、目標シートを記入して、今何をするべきかを考えるようにしている。
このような内容で書くことができるとよいですね。
私が大谷選手を尊敬するひとつめの理由は、自分が決めた目標に向かって努力する姿勢が素晴らしいからだ。大谷選手は高校時代に球速160キロメートルを出すと宣言したそうだ。そのためにはどうしたらよいのか計画を立て、練習に励んだ。そして高3のときに、実際にその目標を達成した。達成できたのは恵まれた体格や運動神経のおかげでもあるが、それ以上に、明確な目標意識と努力の結果だと思った。自分に欠けているものは目的意識だと考えた私は、すぐに大谷選手を真似してみることにした。すると、今までやらされているだけだった練習も、意欲的に取り組めるようになった。今では、目標に向けて今何をするべきかを考えるのが習慣になっている。
第三段落の書き方
第三段落も、第二段落と同様、理由とそれを裏付ける体験を書いていきます。
引き続き大谷選手の例で考えると、
【理由】 周囲の声に流されずしっかり自分を持っているから
【体験】 自分の考えがなく、人の意見に左右されることが多かった。〇〇がこう言ったからやめておこうか、と、自分がやろうとしたこともうやむやにしてしまうこともあった。大谷選手を知ってから、人の意見を聞いても自分の考えを簡単に曲げることがなくなった。
このように、理由と体験を挙げてみましょう。
ふたつめの理由としては、大谷選手は、周囲の声に流されず自分を持っているからだ。周囲の声に影響を受けやすい私は、彼の強い意志に憧れた。投手と打者の二刀流にチャレンジしようとする大谷選手に対して、多くの人が反対したらしい。大リーグのトップを目指すという目標に向けて、ぶれずにひたすら努力を重ねてきた。私も少しでも近づきたいと思い、人の意見に流されそうになったときには、大谷選手の顔を思い浮かべるようにしている。以前に比べると、自分の意見を自信を持って言えるようになった。
いかがでしょうか。
三段落構成で書く場合、理由はひとつだけ書くという流れになります。
ここまでできたら、第四段落、まとめに入りましょう。
第四段落の書き方
まとめを書くにあたり、尊敬する人が自分の生き方や考え方にどのような影響を与えたかを考えてみましょう。
第2段落と第三段落で書いた体験ふたつを通して、共通するものを見つけるとよいでしょう。
たとえば、第二段落と第三段落の書き方の例としてあげたものでいえば、
「自分の苦手を克服するきっかけになった」
という点が共通するのではないでしょうか。
また、尊敬する人とは、人間にとってどんな意味を持つのでしょうか? 自分の個人的な考えから一歩踏み出して、世の中の人に共通する公式を探し出してみましょう。
人間にとって、尊敬する人の存在とは〇〇〇だ。
という形に合うように考えてみてください。
人間にとって、尊敬する人の存在とは、自分を高めるために必要なお手本だ。尊敬する人の存在に近づきたいという思いが、自分の弱点や苦手なことを克服する助けになると思う。
このように書けそうです。
余力があれば、今後の展望を添えて結びにするとよいでしょう。
これからも、尊敬する人の素晴らしい点を見習い、自分を高めるよう努力していきたい。