みなさん、こんにちは。
作文講師の菅野恭子です。学習塾シンクスで作文クラスを担当しています。
2019年の中学年向け課題図書「かみさまにあいたい」で感想文の書き方を解説いたします。
「かみさまにあいたい」で感想文を書いてみよう
神様お願い!
困ったときの神頼みと言いますが、どうにもならないときに神様にお願いしたことがある人も多いのでは?
小3、小4のお子さんが対象の「かみさまにあいたい」の主人公は3年生の男の子、雄一。
そして、ふとしたできごとをきっかけに、その雄一と距離を縮めるクラスメイトの竜也。
仲が良かったわけではないふたりが、ふとしたことでかけがえのない親友になっていく。友達との関係が広がる3,4年生の子にとっては、とても身近な話題なのではないかと思います。
「かみさまにあいたい」という題名がついていますが、雄一、竜也それぞれが神様に会いたい理由があるようです。切実に神様にお願いしたいことがある子も共感できるでしょう。
雄一と竜也のふたりは、かみさまに会えるかな?
「かみさまにあいたい」はこんな子におすすめ
「かみさまにあいたい」は、つぎのような経験をしている子にとって共感できる一冊かと思います。
- 心を許せる友達ができた またはそんな友達がほしい
- 親が忙しく、いつもひとり家で留守番することが多い(兄弟もいない)
- おじいちゃんやおばあちゃんなど、身近な人の死を経験している
- 神様にお願いしたいことがある
- 自分はいなくてもいい子なのではないかと思うことがある
男の子なのでそれなりに冒険心もありやんちゃなのだけれど、どこかナイーブな一面がある子にぜひおすすめしたいです。
物語の中には、家庭の様子がほとんど登場しません。雄一は、3か月前に亡くなったおばあちゃんとの思い出が表現されているものの、両親とのやりとりは皆無できょうだいがいるのかどうかもわかりません。また、竜也のほうも、お母さんが看護士をしているため、家ではひとりで過ごすことが多いことはわかるのですが、お父さんがいるのかどうか、それともお母さんと二人暮らしなのか、明言されていません。
いずれにしても、どこか孤独で居場所がないような雰囲気の雄一と竜也。同じような思いの子どもたちがいるような気がします。
感想文の流れ
感想文の流れは、つぎのようにしましょう。内容ごとに大きく4つのまとまりにすることを意識してみてください。
- この一冊を読んでいちばん心に残ったところをあげる
- 自分の似た経験(反対の経験でもOK)
- 自分の似た経験 もしくは 家族などに聞いた話 もしくは想像した話
- 全体の感想
では、それぞれ詳しく説明していきましょう。
「第一段落 いちばん~は~です」
「いちばん~は~です」とは、いちばん心に残ったところを決める作業です。なにを選ぶのかが、まずは大きなポイントになります。
どんなところを選ぶかによって、つぎに続く自分の体験が変わってきますから。
たとえば……
- いちばんおもしろいと思ったのは、神様に会うためにいろいろなチャレンジをするところです
- いちばんふしぎに思ったのは、雄一も竜也も、家族と一緒の時間はあるのかというところです
- いちばんいいなあと思ったのは、雄一と竜也がいつのまにか親友になっていたことです
このように、中心を絞っておくと、よくあるお悩み「あらすじばかり並べてしまって」という事態を避けることができます。
本を読む段階で候補となる場面に付箋を貼っておくとわかりやすいですよ。記憶に残る場面というのは一カ所だけではありませんよね。いくつか候補をあげておき、その中から、自分の似た経験があるものや聞いた話が書けそうなものを選ぶと書きやすいです。(似た話や聞いた話についてはこのあと詳しく説明しますね。)
第二段落では似た経験を書こう
先ほど決めた「いちばん~」に合わせて、自分の似た体験を書いてみましょう。いちばん印象に残ったところをあげたのですから、関連する話題を広げていきましょう。
たとえば、
「いちばんおもしろいと思ったのは、神様に会うためにいろいろなチャレンジをするところです」を選んだ場合、自分もいろいろなチャレンジをした経験を書きます。
- 習っている体操教室で、どうしてもバク転を成功させたくて、いろいろなチャレンジをした
- 友達と一緒に秘密基地を作りたくて、いろいろなチャレンジをした
- ゲームをどうにかクリアしたくて、いろいろなチャレンジをした
などの経験があるのでは?
また、「いちばんふしぎに思ったのは、雄一も竜也も、家族と一緒の時間はあるのかというところです」を選んだとしたら、
- うちはお父さんが家で仕事をしているので、家族みんなが家にいるのが当たり前。逆にひとりになりたいと思うことがある
- うちのお母さんは、夜に出かけることはほとんどないし、出かけるときはおばあちゃんが来るので、夜にひとりになることがない
など、反対の経験を書くのもおもしろい試みになります。
ポイントは、第一段落に書いた「いちばん~」と関連する自分自身の経験を書くことです。
第三段落はもうひとつの似た話または聞いた話
第三段落では、第二段落に続き似た話を書きます。似た話をふたつ書くのも大変なので、できれば、お父さんやお母さんなどに聞いた話を書くことをおすすめします。
その場合も、第一段落の「いちばん~」に合わせると、統一感のある内容になります。
たとえば、第一段落・第二段落に、さほど仲良しではなかった雄一と竜也が、いつのまにか親友と呼べるような関係になってきたことを書いてきた場合、
「お母さんは、子どものころ、全然仲良しじゃなかった子といつのまにか親友になっていたことがあると話してくれました。昔は、学校から家に帰るとお母さんが待っている子が多かったのに、お母さんはいつも留守番をする鍵っ子だったそうです。そこで同じような鍵っ子の子といっしょに遊ぶようになったらしいのです。まるで雄一と竜也のようだと思いました。」
などの話題を書くとよいでしょう。
また、身近な人の死というところをテーマとしたなら、人生経験の長いお父さんやお母さんは、きっと経験談を話せることでしょう。
ぜひこの段落は、お父さんやお母さんに聞いた話を書いてみましょう。
もしも、似た経験やお父さんお母さんから聞いた話も入れることが難しい場合、
「もし~だったら」という想像した話を書いてみましょう。
たとえば、
「もしわたしが雄一だったら」や「もしぼくが竜也だったら」と想像してみます。この本は主人公に共感しやすい内容ですから、想像した話の方が書きやすい子もいるかもしれません。
第四段落は全体のまとめ
最後の段落は、全体のまとめになります。
第一段落から第二段落、そして第三段落と、共通する点を探り、うまくまとめてみましょう。
全体を通してまとめるという作業は、3,4年生にとっては難しいことです。大人のように俯瞰してみる力が、まだ成長の途中にあるからです。
ですから、つたないまとめになる場合もあるかもしれません。思ったことがしっかり入っていればよしとしましょう。
たとえば、
- いちばん不思議に思ったのは、雄一も竜也も家族との時間がないことだ
- 私の家はいつも家族みんながいる。ひとりになりたいくらいだ
- お母さんは鍵っ子で、いつもさみしかったそうだ。だから自分の子どもには同じ思いをさせたくなかったらしい
こんな流れで書いてきたとします。
その場合、まとめの第四段落では、
当たり前のようにいつも家族と一緒にいて、ときどきわずらわしいなあと思うこともあるけれど、ひとりでいるのはさみしいことなんだと知りました。わらったりけんかしたり、いっしょにごはんを食べたりできる家族がいてよかったなと思いました。
こんなふうに書けそうです。
「かみさまにあいたい」感想文書き方の例その1
「かみさまにあいたい」を読んで、いちばん不思議に思ったのは、雄一も竜也も家族と過ごす時間が全然ないところでした。とくに竜也は、お母さんが看護士さんなので、夜もひとりで過ごしています。私と同じ3年生なのに、竜也のお母さんはどうしてひとりにできるのだろうと不思議に思いました。
私の家では、お父さんもお母さんも家が仕事場なので、家族はいつも一緒です。家でひとりになることなんてほとんどありません。私のお母さんは、夜にでかけることもないので、夜にひとりになったことは一度もありません。たまにお母さんが夜に出かけるときは、おばあちゃんが留守番に来て、私と妹のめんどうをみてくれます。時々、私と妹ふたりでも大丈夫だよと思いますが、おばあちゃんが来るのは楽しいです。ふと、竜也のように、夜にひとりで過ごすことを考えてみました。真っ暗だと怖くて眠れないような気がします。きっと電気をつけたまま寝ると思います。竜也はすごいな、電気を消して眠るのかなと思いました。
私のお母さんは、子どものころ、全然仲良しじゃなかった子といつのまにか親友になっていたことがあると話してくれました。昔は、学校から家に帰るとお母さんが待っている子が多かったのに、お母さんはいつも留守番をする鍵っ子だったそうです。そこで同じような鍵っ子の子といっしょに遊ぶようになったらしいのです。まるで雄一と竜也のようだと思いました。お母さんに、
「家にひとりでさみしかった?」
と聞いたら、
「さみしかったねえ。家でおやつを用意して待っているお母さんがいる子がうらやましかったなあ。」
と答えてくれました。雄一や竜也と、子どものころのお母さんの姿が重なりました。
私の毎日には、当たり前のようにいつも家族が一緒にいます。ときどきうっとうしいなあと思うこともあるけれど、ひとりでいるのはさみしいことなんだと知りました。わらったりけんかしたり、いっしょにごはんを食べたりできる家族がいてよかったなと思いました。私が神様にあえたなら、家族みんなずっとなかよしでいられますようにとお願いしたいです。
「かみさまにあいたい」感想文書き方の例その2
ぼくがこの本を読んでいちばんよかったなあと思ったのは、雄一と竜也が親友になったところです。いつも先生に叱られてばかりで問題児と呼ばれてしまいそうな竜也が、なんだかかわいそうだと思ったからです。家でもひとり、学校でもひとりだなんて、ぼくだったら絶対にいやです。だから、雄一のような親友ができて、ぼくはほっとしました。
ぼくも、竜也のように先生にしかられてばかりだったことがあります。なぜかいつもぼくだけしかられるので、つい、ぼくもたくさん反抗してしまいました。あるときなんて、先生は、お母さんの仕事場に電話をして
「もう私の手に負えませんから、なんとかしてください!」
なんて、無理なことを言っていました。だから竜也を応援したくなったのかもしれません。
先生がお母さんに電話をしたとき、お母さんはどう思ったのか聞いてみました。お母さんは、どうしよう困ったな、私の育て方が悪かったのかしらと悩んだそうです。でも、そう思ったのも一瞬のことで、あの子なら大丈夫! とぼくを信じたのだと話してくれました。お母さんが自分の子どもを信じられなくてどうするのと、にっこり笑いました。ぼくは、ごめんねと、そのときのことを初めてお母さんにあやまりました。竜也のお母さんは、竜也のことをひとりにさせているけれど、きっと信じているからだと思いました。
竜也は、お母さんが自分のことを心配していないと思っているみたいだけれど、かみさまに会えたので、きっとお母さんの気持ちがわかるようになると思いました。竜也と竜也のお母さんも、もっと仲良しになれるといいなと思います。