みなさん、こんにちは!
作文講師の菅野恭子です。学習塾シンクスで作文クラスを担当しています。
今回は、2019年低学年向け課題図書
『心ってどこにあるのでしょう?』
を読んで感想文を書く方へ、感想文の書き方を解説いたします。
心ってどこにあるのでしょう?
「心」という言葉は、低学年の子にも十分通じます。
でも、どこにあるの? と聞かれたら首をかしげる子もいるのではないでしょうか?
いえ、子どもだけではありませんね。大人だって同じ、心ってどこにあるの? と尋ねられたらじょうずに答えることができるでしょうか? なかなか難しい問いです。
そんな、わかるようでわからない「心」の存在。この本では、いもとようこさんのほんわかしたイラストで描かれる登場人物たちが、
- むねだとおもう
- あたまだとおもう
- おなかだとおもう
- しっぽだとおもう
という具合に、自分が思う心がある場所をつぎつぎに教えてくれます。それも、具体例つき!
たとえば、犬がこう言います。
ぜったいぜったい しっぽだよ!
ぼくがかんがえるまえに
かってにしっぽがうごくのだから。
心はしっぽにあるにきまってる。
低学年の子にとって、このような具体例が入っているのは、とてもわかりやすいのではないかと思います。あ、私もこういうことある! ぼくも! というように、共感しながら読めますね。この部分に関してはあとで詳しく解説いたします。
では、どのように感想文に取り組んでいったらよいかに進みましょう。
「心ってどこにあるのでしょう?」で感想文を書くなら
低学年の子にひとりで感想文を書かせるのは、正直とてもハードルが高いです。ですから、この解説では、親子で取り組むことを前提に進めていきます。
まず、感想文の構成ですが、大きく分けて4つの部分で組み立てていきましょう。
低学年ではまだ、構成というものを上手に認識することができません。学校では、「はじめ・なか・おわり」というように3つのパートに分けて書いていくように指導されているかもしれません。その場合は、「なか」にあたる部分を4つのパートのうちの2と3に充てると考えていただくとよいでしょう。
4つのパートの内容は、おおまかにつぎのように考えてみてください。
- 本の紹介と、いちばん興味を持ったこと
- 本の内容と同じような自分の体験
- お父さんやお母さんに聞いた話
- 全体のまとめ
この段階では、まだちんぷんかんぷんかもしませんが、大丈夫。
このあと、1から順に考えていきましょう。
本の紹介といちばん興味を持ったこと
感想文の書き方の本などでは、冒頭に、どうしてこの本を選んだのかを書くように解説されているかと思います。また、学校でも、同様の指導をされているかもしれませんね。
どうしてこの本を選んだのかと言われても……返答に困る子もいると思いますので、私は、本の紹介の方が書きやすいのではないかと考えます。
たとえば、
この本は、こころがどこにあるのか、考えるための本です。女の子や男の子、たぬきや犬、うさぎたちが、こころのあるばしょを教えてくれます。わたしも、読みながら、お母さんといっしょに考えました。こころはどこにあるんだろうと。
こんなふうに、本に書いてあることやどのように読んだかを書くとよいですよ。だれといっしょに読んだとか、ちょっとした情報を入れるのもよいです。
そして、いちばん興味を持ったことを書いていきましょう。
興味を持ったことと書きましたが、
- いちばんおもしろいと思ったのは~です
- いちばんびっくりしたのは~です
- いちばんふしぎに思ったのは~です
など、心にひっかかったことを書くということです。
たとえば、
- 私がいちばんおもしろいなと思ったのは、犬が、「こころはしっぽにある」と言ったところです
- 私がびっくりしたのは、こころは体じゅうにあるということです
など。
まずは、お子さんが関心を持った部分を探ってみましょう。
「いちばんおもしろいと思ったの、どこ?」
と尋ねると、「ここ」という答えが返ってきます。
見当はずれな意見だとしても、否定せず、
「そうなんだ、すごいね。どうしてここがおもしろいと思ったの?」
というように、受け止めて質問、再度受け止めて質問、を繰り返します。質問されることで、だんだん思いも明確になってきますので、面倒くさがらずに付き合ってあげてくださいね。
書き方の例
この本は、こころがどこにあるのか、考えるための本です。女の子や男の子、たぬきや犬、うさぎたちが、こころのあるばしょを教えてくれます。わたしも、読みながら、お母さんといっしょに考えました。こころはどこにあるんだろうと。読んでいていちばんびっくりしたのは、こころは体じゅうにあるということです。
では、つぎは2つめのパートに進みましょう。
本の内容と似た体験をみつける
二つめのパートでは、本の内容と似た体験を探してみます。
前述したとおり、この本では、登場人物が自分の思う心のありかを、どうしてそう思うのか具体例を挙げながら述べています。
この具体例と同じような体験をしたことがないかを探すとよいでしょう。
- すきなひとにあうとほっぺがまっかになった だから心はほっぺにある
- むねがどきどきした だから心はむねにある
- いろいろかんがえるとあたまがいたくなる だから心心はあたまにある
- いやなことがあるとおなかがいたくなる だから心はおなかにある
- あくしゅしたらあったかくなるしなかよくなれる だから心は手にある
このように具体例がたくさんでてきます。
「心ってどこにあると思う?」
「いつそう思ったの?」
「どんなときにそう思ったのかな?」
このような問いかけをすると、体験談がぽろりと出てくると思います。
書き方としては、
わたしは、こころはやっぱりむねにあると思います。それはどうしてかというと、わたしはうれしいことがあると、むねがぱあっとひろがるような気持ちがするからです。はんたいに、かなしいことがあると、むねがしぼんでいくようにかんじます。それは、まるであさがおの花がちいさくしぼんでいくようなかんじです。友だちにやさしくされるとむねがあったかくなります。いじわるされるとれいとうこにはいったみたいにこおってしまいます。だから、こころはどこにあるかときかれたら、ぜったいにむねだとこたえます。
このような感じです。
お父さんお母さんは心ってどこにあると思う?
さあ、半分終わりましたので、あともうひとがんばりです。
2つめのパートでは、お子さんが「こころってどこにあるの?」という問いに答えましたが、3つめのパートでは、お父さんやお母さんがこの問いに答えてみてください。
それを、
「心ってどこにあると思う?」とお父さんに聞いてみました。お父さんは、~~~と言いました。
というように、聞いた話として書いていきます。
なるべくお子さん目線に立って、書きやすいようにお話ししてくださるとよいですね。
書き方の例を挙げておきますね。
「心ってどこにあると思う?」
とお父さんに聞いてみました。お父さんは、
「むずかしいなあ」
とこまった顔をしました。お父さんは、心は体じゅうにつまっていると思っているそうです。どうしてかというと、きんちょうすると手も足も声もふるえるし、こまったことがつづくとあたまがいたくなるからだそうです。しごとからかえってきてわたしの顔を見ると、むねがあったかくなるとも言いました。わたしはむねだと思うけれど、お父さんはちがうのだなと思いました。もしかしたらおとなになったら、お父さんみたいに体じゅうにあると思うようになるのかもしれません。
さあ、いよいよ最後のパートです。完成までもう少し!
最後は全体のまとめでしめくくります
最後は全体のまとめです。
理想形は、1~3までのパート全体を通して、考えたことやわかったことをまとめるというもの。
しかし、低学年では、全体を俯瞰してみる力はまだ育っていませんので、単純に思ったことを書くのみでOKです。
いろいろ考えてみたけれど、私はやっぱり、こころはむねにあると思います。でも、人によってこころのあるばしょはちがうということもわかりました。わたしはわたしのこころをたいせつにしていこうと思います。
このくらいのまとめでもOKです。
目には見えないけれど、だれもがみんなもっているこころについて、どう扱っていくのがよいか考えてみるのもよいですね。まだ幼いなりに、それぞれ思うところがあると思います。その思いを丁寧に掬ってあげてください。