みなさん、こんにちは。
作文講師の菅野恭子です。学習塾シンクスで作文クラスを担当しています。
神奈川県では、県立高校入試に面接が課されます。
面接を受けるにあたり、面接シートを作成しなければなりません。この面接シートの作成に困る生徒さんが後を絶ちません。
というのも、学校で、ひとりひとり丁寧に指導してもらえるものではないからです。書き方の見本をもらい、そのまねをしながら内容を考えていくのが王道のようです。でも、見本と同じような状況の子ならまだしも、かけ離れた状況にいる子にとっては、さっぱり役に立たないお手本でしかありません。志望理由や長所、重ねてきた経験など、生徒の数だけあるのですから当然といえば当然なのですが……。
ということで、このところ、面接シートの添削や作成のお手伝いをしています。
今日は、面接シートの書き方についておさえておきたいポイントをお伝えしたいと思います。
ひとりですらすら埋めることができる子もいますが、どう書いたらよいのかさっぱりわからない子もいます。今回は、さっぱりわからない子に向けてお伝えしています。
面接シートとは?
神奈川県の場合、次の4点が問われます。
- なぜこの学校に入学したいのですか?
- 中学校での教科等の学習活動に対して、どのような意欲をもって取り組みましたか。
- 中学生のときに教科等以外の活動に対して、どのような意欲をもって取り組みましたか。(中学外の取り組みでも構いません)
- 自分自身のよいところはどのようなところだと考えていますか。
このシートに直接点数がつけられることはありませんが、この内容をもとに面接が進められるという前提で書くものなので、手抜きはできません。それぞれの項目について与えられた枠内で埋めていくと、だいたい150字ほどは書く必要があります。
では、それぞれの項目ごとに書き方を考えてみましょう。
志望理由について
難関校を狙うレベルの生徒さんでしたら、特に困ることもないかもしれません。あの高校に行きたいから勉強する、という確固とした理由があり学習している子が多いからです。
しかし中堅校から下のレベルの子にとっては、現状の成績に合わせて志望校を選択するという状況のため、受験する高校にそれほど強い思い入れがあるわけではないのです。行きたい高校というよりも行ける高校という視点で見ていますから、
「レベル的に受かりそうだったから」
が本音ではないでしょうか。そのような状況では、明確な志望理由は、ひねり出さないとなかなか書けないのです。
では、どうやってひねり出したらよいでしょうか。それを一緒に考えてみましょう。
まず、重要ポイントを確認しておきます。
なぜ? と尋ねられているので、必ず、「入学したい理由」を答えるようにしましょう。
理由を表現するときは、「○○だから」という文で答えます。おさえておいてくださいね。
そして、その理由ですが、つぎのようなものがよいでしょう。
- 校風や教育方針が魅力的だから
- 将来の夢につながるから
- 学園祭で学校の雰囲気がとてもよいと感じたから
- 興味のある授業があるから
- 資格が取れるから
- 参加したい部活があるから
- 進学を希望しているから
なかには、ご両親の出身校なので、という子もいます。そのような理由でもよいでしょう。
志望理由:書き方の具体例
では、具体的に書いてみましょうか。
参考に書き方の例を挙げておきますので、自分の状況や志望校の特徴に合わせ、内容を変えていくとよいですよ。
「将来の夢に近づけるから」
私が貴校に入学を希望するのは、将来の夢に近づけるからです。私は幼いころから大工になるのが夢です。貴校では、1年生のころから建設に関する授業があるので、興味を持って学習に臨めると考えています。3年間しっかり学習して、卒業後は夢だった大工として、社会に貢献していきたいと考えています。
「学園祭で学校の雰囲気がよいと感じたから」
私は、貴校の学園祭に行ったことがあります。昨年と今年、2年続けて行きました。在校生のみなさんが元気よくあいさつをしてくださるところや、ごみを落とす人がいないところなど、マナーのよさが印象的でした。私が貴校を志望したのは、このような環境の中で3年間を過ごすことができたら、自分自身を磨くことができると考えたからです。
「興味のある授業があるから」
私が貴校を志望したいちばんの理由は、選択科目で様々な分野の学習ができるからです。まだ将来の希望がはっきりしていない私にとって、実際にいろいろな勉強にチャレンジできることは、自分の適性や興味の対象が理解できるし、将来の道を探すよい機会だと考えました。またいろいろな資格取得にチャレンジできる点も魅力だと思いました。
「参加したい部活があるから」
私が貴校を志望したのは、〇〇部があるからです。私は幼いころから○○を習っていましたが、中学には〇〇部がなかったため△△部に入部しました。それでも○○は中断したくなかったため、教室に通い続けました。ですから高校では、○○部のある学校に入りたいと考えていました。貴校の〇〇部は毎年全国大会に出場している実績があるので、入部してさらに技術を磨きたいと思っています。
教科等の学習活動にどのような意欲をもって取り組んだか
つぎに書くのは、「教科等の学習活動に対して、どのような意欲をもって取り組みましたか」という質問に対しての答えです。
教科等と指示がでていますので、5教科もしくは9教科についてどのように取り組んだかを答えます。「どのような意欲?」と聞かれているので、的外れな答えにならないよう気を付けましょう。
- 定期テストでは毎回何点を取ろうと目標を決め、その目標に向けて学習してきた
- 将来英語に関する仕事に就きたいので、英語はだれよりもできるようになりたいと熱心に授業に臨んだ
- 苦手な数学を克服することを目標に、わからないことはその日のうちに解消することを目指した
- 家庭の都合で塾に通うという選択肢がなかったったため、授業を100%理解することを目指し、熱心に授業に参加した
このような、学校の勉強への取り組みについて書いてみるとよいでしょう。勉強をあまりやってこなかった生徒さんでも、なにかしらの努力はしているはず。少しでも向上しようと努力したことや工夫したこと、チャレンジしたことを思い出してみてください。
学習活動への意欲:書き方の例
では、書き方の具体例を挙げていきますね。
定期テストの勉強
私が特に意欲的に取り組んだのは定期テストです。定期テストのたびに、毎回得点の目標を決め、その目標に向けて学習してきました。計画を立てることは得意ではありませんが、テスト前は明確な目標を立て、準備を怠らずに取り組んできました。2年生のときに体調を崩してしまい思うように計画が進まないという失敗を経験してからは、自己管理にも気を遣うようになりました。
将来の夢につながる教科の学習
私は、将来英語に関する仕事に就きたいと考えています。そのため、英語はだれよりもできるようになりたい思い、熱心に授業に臨みました。予習は欠かさず、授業中にわからないことがあれば、先生に質問したり、休み時間に自分で調べたりしてきました。英語が苦手な友達に率先して教え、自分の知識が定着するような工夫をしました。また、学校の授業だけでなく、英検の勉強も独学で進め、英検2級を取得することができました。
苦手克服
私は、小学生のころから算数が苦手でした。中学では数学の苦手を克服したいと考え、まずは毎日数学の勉強に取り組むことを決意しました。数学が得意な友達に付き合ってもらい、わからない問題をひとつひとつ解決していきました。そうしているうちに数学の点数は目に見えて上がり、今では得意科目のひとつになったほどです。苦手だと決めつけて逃げていただけだったことに気づいたとともに、行動することの大切さを実感しました。
授業で100%理解
私は、授業を100%理解することを目指し、熱心に授業に参加してきました。家庭の都合で塾に通うという選択肢がなかったため、成績を上げるには、わからないことを作らないことが何より大切だと考えたからです。そのため、だれよりも集中して先生の話を聞いてきたという自信があります。また、わからないことがでてきたときはなるべく早く解決できるよう心掛けてきました。そのため、集中力と効率よく学習する力が身についたと思います。
教科等以外の活動についての意欲:書き方の例
ここでは教科等以外の活動に対して、どのような意欲をもって取り組んだかを聞かれています。学校外の取り組みでも構いませんと注釈があるので、学校に限らなくてもOK。
教科外ですから、部活や生徒会、委員会活動などがよいでしょう。学校外だと、スポーツや習い事などに打ち込んだことでもよいですね。また、家族の一員として家の手伝いをしたことなどもアリ。ボランティア活動や地域での活動などでもよいでしょう。
この内容だと、部活について書く生徒さんが多いかと思います。部活といっても様々な書き方ができます。
個人競技が団体競技か、レギュラーだったか補欠だったか、体育系か文化系か…いろいろなアプローチがあります。じっくり振り返ってみてください。
では、具体的な書き方をいくつか挙げてみます。
部活
私は、3年間サッカー部に所属していました。幼少のころからサッカーをやってきた部員が多い中、私は、中学に入り始めて本格的にサッカーを始めた初心者でした。なんとかみんなに追いつこうと練習中は誰よりも動き、準備や掃除も積極的に取り組みました。また、帰宅したあとも毎日欠かさずリフティングの練習をしました。その結果3年のときには試合に出る機会も得ました。コツコツ継続することの大切さを学びました。
私は、3年間ソフトテニス部に所属していました。私の中学のソフトテニス部は毎年県大会に出場する強いチームだったため、私は個人戦で県大会出場を目指して1年のときから意欲的に練習に励んできました。思うように上達しない日が続き落ち込むこともありましたが、先輩にアドバイスを求めたり、本を読んだり、諦めずに努力した結果、3年の県大会では個人戦でベスト8に入ることができました。
私は吹奏楽部に所属していました。3年では部長として、県大会出場を目指して練習に励んできました。特に私が力を入れたのが、部をひとつにまとめることです。吹奏楽では、部員全員の心がひとつになって初めてよい演奏ができます。演奏の技術を磨くだけでなく、心をひとつにするため、みなの意見を拾って部内の環境を改善したり、練習方法を変えたりと、リーダーシップを発揮することができました。
校外での活動
私は、幼いころから剣道を習っています。中学には剣道部がないため、今でも地域の剣道教室に所属しています。中学に入り、段位を取ることを目標に練習に励みました。目標をしっかり決めていたため迷うことなく練習に打ち込むことができました。一緒に練習しているメンバーにはいろいろな年齢の人がいます。大人の人には敬語で失礼のないよう話したり、小さな子には優しく面倒をみたり、コミュニケーション能力を鍛えることができたと考えています。
家庭での手伝い
私は、中学時代を通して、家の手伝いを意欲的に取り組みました。母が仕事で忙しいため、少しでも支えたいと考えたからです。中学に入学するときに、毎日のお弁当は自分で作ると決め、3年間やりとげたことは、私にとって大きな自信になりました。洗濯物を取り込んで畳むのも私の仕事でした。積極的に家のことをやるようになり、親への感謝の気持ちを持つようになりました。
自分の長所:書き方の例
最後は自分のよいところについて。
自分のことは意外とわからないものですね。また、必要以上によく見せているようで気恥ずかしい気持ちになり、アピールすることに躊躇してしまう子も多いようです。
せっかくのアピールする場ですので、ここは自信をもって長所を書いてみましょう。
もし自分の長所がいまいちわからないという方は、こちらの記事も読んでみてください。
長所を述べるだけでなく、その長所をどう生かしてきたかのエピソードを必ず書きましょう。
長所をひとつだけ書く場合は、
「私の長所は〇〇です。+具体例」
ふたつ以上の場合(多くてふたつでよいと思いますが)は、
「私の長所はふたつあります。ひとつは〇〇、もうひとつは〇〇です。+具体例」
という形で書いていくとよいでしょう。
具体例
私の長所は、意志が強いところです。一度決めたことは、最後までやりとげることができます。中1のときに野球部に入った私は、毎日欠かさず素振りをすることを決めました。部活を引退するまで、インフルエンザにかかったとき以外は、決めたとおり毎日やりとげました。高校でも、この意志の強さを生かし、自分が成長できることを続けていきたいと考えています。
私の長所は臨機応変に物事に対応できるところです。文化祭や体育祭など、クラスで話し合って企画を考えるときなど、状況が転々とすることがあります。一度決めたことを変えると、多くの人が嫌がりますが、そのようなとき私は、それならどうしたらよいかを考え柔軟に対応することができます。そのときそのときで最善を尽くすことができるのは私のよいところであると考えています。
私の長所はふたつあります。ひとつは前向きなところです。失敗したときも次は成功させることを考え、くよくよ落ち込みません。ふたつめは、いつも機嫌よく過ごすところです。人の機嫌は自分にも周りの人にも影響を与えます。自分の周りの人が心地よく過ごすためにも、私はいつも機嫌がよい状態でいようと心がけています。機嫌よく前向きに過ごすことでやる気もわき、勉強にも部活にも積極的に取り組めました。
私の長所はふたつあります。ひとつは困っている人に手を差し伸べることです。クラスで困っている友達がいれば声をかけ助けてあげます。また、先生の手伝いも進んでやりました。ふたつめは、責任感が強いことです。自分の仕事は手を抜かず丁寧にやりとげます。生徒会の美化委員の仕事で校外清掃をしたときも、今まででいちばん綺麗になったと近隣の方から褒められました。高校でも人の役に立つことを続けていこうと思っています。
まとめ
いかがでしたか? 書けそうでしょうか?
書き上げたら必ず読んでみて、誤字がないか、意味が伝わりにくい表現がないか、確認しましょう。家族の方に読んでもらうことをお勧めします。自分では見落としてしまうミスに気付いてもらうことができます。
面接シートを書くということ自体が初めての経験で、どうしていいかわからない子も多いと思います。でも、自分についてじっくり考えるよい機会だと捉え、チャレンジしてみてください。
はじめからうまくいかないのがあたりまえです。メモをとり、何度も何度も書き直して仕上げていくつもりで取り組んでみてください。教室の生徒さんも、書いては消して、消しては書いての繰り返しです。
通常、担任の先生がチェックしてくださるはずなので、完璧を求めなくても大丈夫ですから、まずは書いてみましょう。
合格めざしてがんばろう!