作文の書き方

中学生の意見文の書き方:長文からテーマを探し出す

みなさん、こんにちは!

作文講師の菅野恭子です。学習塾シンクスで作文を教えています。

毎週土曜日は、東品川教室の作文クラスの日。

今日のクラスで指導した、中学生の意見文の課題についてお話ししようと思います。

日本では、協調性のない人や空気の読めない人が肩身の狭い思いをすることが多いです。

それゆえ、自分が置かれている状況を考え、本心でない選択をすることもありますね。

また、反対に、自分の意思を通したら通したで、後味の悪さを味わうこともあるでしょう。

今回は、そんな内容が描かれた長文を読んで、主題(是非の主題:~はよい/~は悪い)を考えていきます。

 

課題の長文はこんな内容

長文の舞台は、中学のサッカー部。

都大会で活躍し、特待生で進学を考えている吉川と、受験を控え勉強に専念したいと部活を辞めていく宗介。

同じ中学生というところで共感できる内容ですよね。特に、団体競技の部活に所属している子には、親近感がわくのではないでしょうか。

 

課題の長文

課題の長文はこちらです。人気のある長文ですので、ぜひ読んでみてください。

吉川のパスは蹴った者の意思がのり移ってでもいるかのように、全力疾走中の宗介の右足に吸い付いてきた。宗介はただそのボールをエンドラインぎりぎりまで持ち込んでセンターリングを上げればよかった。反対方向から走り込んできたフォワードの連中がへディングなりダイレクトなりでシュートを決めてくれるのだった。 
 (中略) 
 秋の都大会では決勝まで進み、延長戦でも決着がつかなかったのでペナルティーキック合戦にまでもつれこみ、結局準優勝に甘んじた。大会中の目立った選手がベストイレブンに選ばれたのだが、やはり優勝チームから選出される者が多く、技術的には優勝チームの同じポジションの選手を上回っていた吉川は選にもれた。 
 冬に例年にない走り込みをして、今年こそは優勝を、と団結を強めていたのだが、三年の夏休みを前にした暑い午後、宗介はコーチの浅野に退部を申し出た。前日、夏休みの練習計画が浅野から発表されたのだが、毎日朝九時から夕方六時まで練習メニューが決められ、休日は一日もなかった。吉川という天才的な選手を得て、都大会優勝は今年を逃しては当分無理だ、と読んだ浅野の決意の表われた計画表であった。 
 宗介の学業成績は、もう少し頑張れば進学校といわれる都立高校に手が届く程度のものだった。ドリブルしながらフェイントをかけるとき、どうにもならない生来の体の硬さをよく知っていたので、サッカープレイヤーとして一人前になれないことは分かっていた。夏の練習に参加すれば受験勉強ができなくなる。 
「退部します。お世話になりました」 
 すでに練習が始まっている校庭の花壇の前で、トレーニングウエア姿の浅野に向かって宗介は頭を下げた。 
「冗談はよせ」 
 浅野は首にかけたホイッスルをタバコでもすうように口にくわえた。よく陽に焼けた狭い額の皺の中から大粒の汗が湧いていた。 
「本気です。辞めさせて下さい」
 チームメイトたちが円陣キックをしながらこちらを注目していたので、宗介は今度は頭を下げなかった。 
「ああやって懸命に練習している仲間を裏切るのか」 
 浅野は花壇のひまわりの茎をつかんだが、語尾の震えとともに折りとってしまった。 
「自分の生き方を自分で決めただけです」 
 青く高い夏空の下で、中学三年の宗介はためらうことなく言い切った。 
 浅野は手にした大輪のひまわりを乾いた地面に叩きつけ、円陣の方に歩み去った。黄色い花びらが宗介ズボンの裾に散った。 
 右ウイングの自分が抜けても、実力にほとんど差のない二年生の補欠を補充すれば、チーム全体の力は落ちない。誰にも相談せずに退部を決めた宗介があくまで個人的な問題なのだと自らを納得させていたのにはこんな状況判断があったからだった。しかし、事態は彼の予想しなかった方向に広がってしまった。 
 宗介が辞めたのを知った三年生のレギュラーたちが翌日から次々に退部を申し出るようになってしまった。宗介よりもはるかに成績のよいゴールキーパーの菅井やハーフの堀田までもが受験勉強を理由に辞め、夏休みの前日になって残った三年生のレギュラーは吉川一人になってしまった。 
 学校の花形クラブであるサッカー部の三年生の大量退部は職員会議の話題にもなったようだが、理由が受験勉強に専念したい、という至極まっとうなものだったので、校長や教頭も口をつぐんだままだった。 
 一学期の終業式を終えて校門を出るところで、宗介はユニフォーム姿の吉川に呼び止められた。吉川は照れたように目を細めながら自転車置場の方に手招きした。 
「おれはさあ、頭もよくねえし、板前にでもなっておふくろの店手伝うしかねえんだけど、サッカーやりてえんだ」
 スレート屋根の下の日陰はひんやりしていた。吉川はスパイクの裏のアルミピンで柱を蹴りながら下を向いて話していた。 
「都大会のベストイレブンになれたら、私立高校のサッカー部に特待生で入れるかと思ってな。おれはさあ、そう思ってサッカーやってきたんだ。板前になる前にサッカーで花咲かしてみたくてな。おれの、夢だな。あの小せえ店に入る前に、夢くらい見たっていいと思ってな」 
 吉川は下を向いたままいつの間にか泣いていた。乾いた砂の上に落ちる涙は夕立の雨つぶよりも大きかった。 
「悪いな」 
 宗介はもっとこの場に適した言葉を見つけられない自分にいらだった。いっそ殴ってくれたら、このいらだちも解消するのに、と思った。 
「いや、いいんだ。ただ、おれのグチも聞いてもらいたくてさ。気にすんな。おまえ、いいウイングだったよ」 
 吉川は顔を洗うように両手で涙を拭くと、そのまま走って行って新しいチームのシュート練習に加わった。 
 宗介は砂の上に残る吉川の涙の跡をしばらく見つめていたが、やがて大きな深呼吸とともに靴で消し、校庭を振り返らずに校門を出た。 
   (南木(なぎ)佳士(けいし)の文章による)

 

意見文の書き方の流れ

  1. 是非の主題(~はよい/~は悪い)
  2. 理由その1+体験談
  3. 理由その2+体験談 or 家族など周囲の人から聞いた話 or 本などで得た知識
  4. 反対意見への理解+是非の主題

まずは主題をたててみよう

いかがでしょうか。

吉川の気持ちも宗介の気持ちも、どちらも理解できるのではないでしょうか。

もし自分が吉川だったら……

もし自分が宗介だったら……

そう考えながら読んでみると、自分の考えがはっきりしてきます。

今回の長文から考えられるテーマは、

  • 周囲に流されないことの大切さ
  • 自分の意志を貫くことの大切さ
  • まわりと協力することの大切さ

などでしょうか。

たとえば、宗介はじめ退部していった生徒のとった行動は、吉川には裏切りのように思えたことでしょう。

でも、宗介たち本人にとっては、自分の人生を真剣に考えた結果だと言えます。

また、集団競技であるサッカーに取り組んだ時点で、チームメイトに対する責任があると考える人にとっては、宗介たちの行動は、許せないものでしょう。

人それぞれ考え方が違いますから、どんな主題になっても間違いではありません。

主題を裏付ける理由をふたつ考えよう

どんな主題をたてましたか?

自分でたてた主題が正解です。

自信を持って次に進みましょう。

主題を決めたあとは、なぜ自分がそう考えるのか、理由を述べていきます。

自分の意志を貫くことはよいと思う。

このような主題をたてたとしましょう。

どうしてよいと思ったのか。その裏には、必ず理由があります。

自分で納得して行動しないと、後悔するからだ。

自分の人生は、自分の思う通りに切り開いていきたいからだ。

このように、主題を裏付ける理由を考えていきます。

体験談や聞いた話を添えよう

そして、理由には、必ず自分の体験を添えましょう。

口先だけで理由を述べても、説得力に欠けます。自分がリアルに体験したことを述べることで、「ああ、だからこの子は、こう思うのだな」と、読み手に納得してもらえるのです。

自分で納得して行動しないと、後悔するからだ。私は、部活を決める際に、友達に誘われるままなんとなく〇〇部に入部してしまった。それほど興味もなく、得意でもないせいで、部活の時間は正直苦痛だった。友達がいないと心配だからという理由で、そのときはほかの選択肢を考えることができなかったが、とても後悔している。

このように、自分で納得して行動しなかったことで後悔した体験談を入れるのです。

理由はふたつ述べますので、ひとつめの理由には自分の体験談を入れてみましょう。

そして、ふたつめの理由には、家族など周囲の人から聞いた話を入れるようにしてみてください。

自分の人生は、自分の思う通りに切り開いていきたいからだ。私の父は、商売人の家に生まれた。幼いころから家を継ぐように刷り込まれていたらしいが、父はどうしても就きたい職業があった。だから、祖父の大反対を押し切って東京に出てきたそうだ。「いろいろ苦労もあったけれど、自分の人生を思う通りに生きてきたので、ほんとうに幸せだ」と父は笑う。また、「もし、親のいうことを聞いて家業を継いでいても、親のせいにして不満ばかり言ってただろうな。」とも言っていた。

このように、自分の人生を思うとおりに切り開いてきてよかった、という聞いた話を入れてみます。

自分のたてた主題に説得力を持たせる理由と体験談または聞いた話を用意してみましょう。

ここは、自分の今までの体験を棚卸しする必要がありますね。

じっくり取り組んでみましょう。

最後は反対意見へ理解を示して、再度是非の主題

ここまでできたら完成は目の前。

最後の段落に入りましょう。

ここでは、反対意見へ理解を示し、再度、とどめのように是非の主題を繰り返すという流れで進めていきます。

是非の主題は、あるテーマについて~はよい または ~は悪いと、いずれかの立場を選択するのでしたね。

ですから、自分とは相反する意見のひとがいるわけですね。

その反対意見を唱えるひとたちに理解を示してみましょう。

「そうだね、あなたの言い分もわかるよ」

と。

これを、「反対意見への理解」といいます。

その書き方は、つぎのようになります。

確かに、協調性も大切だが~

確かに、ある程度は、みんなのために生きることも大切だが~

そして、反対意見への理解のあとに、再度自分の立場を主張します。

確かに、ある程度は、みんなのために生きることも大切だが、そのせいで自分の人生を犠牲にしたら本末転倒だ。その場はなんとかうまくまとめることができても、結局、不満が出てきてしまうだろう。以上の理由から、私は、自分の意志を貫くことはよいと思う。

このような流れを作ります。

理由に書いた内容を考慮しながら、適宜言葉を補って、うまくつないでみましょう。

 

意見文の書き方の流れは、コツをつかんでしまえば意外と簡単です。

いちばん難しいのは、長文から主題を読み取ることでしょう。

 

国語の教科書や、問題集の長文など、文章を読むときは何がテーマになっているのかを把握しながら読む習慣をつけると、読解力アップにも繋がりますし、なにより思考力がアップします。

 

ABOUT ME
菅野恭子
筑波大学第二学群日本語・日本文化学類卒。 作文指導に定評のある言葉の森にて指導に携わる。 現在、言葉の森の教材・指導法にてシンクス東品川教室・シンクス上永谷教室・シンクス阪東橋教室で作文教室開講中。 2000年2001年2002年生まれの三兄弟の母。