感想文の書き方

感想文の書き方 課題図書「クニマスは生きていた」で感想文を書くなら

みなさん、こんにちは!

学習塾シンクスで作文を教えている菅野恭子です。

感想文の書き方についての記事、今回で6回目になります。

第一回は、中学年向けの課題図書「レイナが島にやってきた!」で感想文を書くなら

第二回では、高学年向けの課題図書「こんぴら狗」で感想文を書くなら

第三回では、高学年向けの課題図書「ぼくとベルさん」で感想文を書くなら

第四回では、中学年向けの課題図書「最後のオオカミ」で感想文を書くなら

第五回では、低学年向けの課題図書「きみ、なにがすき?」で感想文を書くなら

をお伝えしました。

今回は、高学年(5,6年生)向けの課題図書「クニマスは生きていた!」で感想文を書くためのポイントをお話ししようと思います。

もう夏休みも終盤。

慌てて取り組む子も多いかと思いますので、大切なポイントだけかいつまんで解説したいと思います。

Contents

「クニマスは生きていた!」のあらすじ

「クニマスは生きていた!」は、ノンフィクションです。

具体的な数字をもとにしたデータや、詳細な取材をもとに書かれています。子どもによっては苦手な分野だと言う子もいそう。

反対に、生物についての興味や自然、環境などについて興味がある子には、比較的感想文を書きやすい一冊だと思います。

舞台は秋田県の田沢湖。

田沢湖は、日本一深い湖。昔から神秘の湖と言われていたようで、辰子姫伝説という伝説が語り継がれてきた一面もあります。人々が畏怖の念を持っていたことが伺えます。

そんな田沢湖が、汚染され、生き物が住めなくなった死の湖になったのは昭和15年(1940年)のある出来事がきっかけでした。

それは、田沢湖が、水力発電と農業用水のためのダム湖として使われることになったこと。

田沢湖に住んでいた生物は姿を消してしまいました。田沢湖固有の生物、クニマスも絶滅してしまった(と思われていた)のです。

ところが、田沢湖から遠く離れた山梨県西湖で、クニマスが発見されました。

どうしてそんな遠くにで? だれもが疑問に思うことでしょう。

代々クニマス漁を生業にしていた家に生まれ、幼少のころからクニマスに触れていた久兵衛さんは、クニマスに関わるものとして、クニマスを絶滅させてしまったという罪悪感を抱えていました。その久兵衛さんが、昔の記録などをあたったところ、田沢湖がダム湖になる前に、クニマスの受精卵を西湖に送り出したという確かな証拠を見つけたのです。

クニマス探しは大変難航したものの、やはり、西湖でクニマスの生存が確認されました。

絶滅したと思われた生物が発見されたというのは、国内でも初めてのこと。また、その生物を完全養殖するというのも初めて。関係者は、生態系のバランスを考えながらクニマスの養殖を慎重に進めています。

ふるさとの田沢湖にいつか帰れる日がくるよう、田沢湖も水質の向上や環境の向上へと力を入れているところです。

「クニマスは生きていた!」のテーマは?

大きく考えると、このようなテーマが想定されているのではないかと思われます。

  • 環境
  • 自然
  • 生物
  • 仕事
  • 使命
  • 住んでいる地域への愛情

どこの注目するかによって、様々な感想が書ける一冊です。

自分がどこに興味を持っているか、自分に知識があるのはどの分野か、そこからお話に感情移入していくのもよいでしょう。

書き方の流れ

大きな流れはつぎのとおりです。

  1. あらすじの紹介
  2. ネタその1
  3. ネタその2
  4. (ネタその3)
  5. まとめ

ネタとは

ネタについて、解説しておきますね。

ネタとは、

いちばん心に残った場面は~

自分の似た体験

家族など、人から聞いた似た体験

この流れをひとつのまとまり(ネタ1)とします。

いちばん心に残った場面は~

自分の似た体験

もし~だったら(想像した話)

聞いた話の代わりに、「もし~だったら」という想像した話を用いてもOK。

いちばん心に残った場面は~

自分の似た体験

家族など、人から聞いた似た体験

もし~だったら(想像した話)

 

というように、フル装備にしてもOK。

ネタの具体例

いちばん心に残ったのは。。。。

クニマスが絶滅していなかったとわかった今、秋田の人々が田沢湖を綺麗にするための活動を熱心に進めているところ

自分の似た体験は。。。

町のシンボルともいえる川のゴミ拾いをずっと続けていること

家族など周囲の人から聞いた話は。。。

いまはごみがあふれる川。お父さんが子どものころは、とてもきれいな川で、水は透き通り、魚もたくさんいたらしい。夏になると子どもは川で泳いでいたそうだ。

もし~だったら

もし川がこのまま汚れ続けていったら、美しい景観のこの街も、住んでいる人も、汚れていくような気がする。

 

このような流れで、ネタを完成させていきます。

ネタは少なくとも2つあると内容が深まる

全体の字数は1200字程度となりますので、少なくとも2つのネタがあるとよいでしょう。

心に残った部分をふたつ書く場合、書き方はこのようにします。

この本を読んで心に残ったところがふたつある。

まずひとつめは~~~~ (ネタ1)

そしてふたつめは~~~~ (ネタ2)

 

最後は全体のまとめで

最後の段落は、全体のまとめです。

全体のまとめですから、ネタ1とネタ2に共通する感想を書くのが望ましいです。

と言うのは簡単ですが、なかなか難しい部分でもあります。

なぜなら、俯瞰する視点が必要になってくるからです。

高学年とはいえ、まだ小学生。俯瞰的に見るなら、やはり大人の方が向いているでしょう。

難しい年頃かもしれませんが、ネタ1とネタ2を読んでみて、共通する部分について親御さんがヒントを出してあげるとよいと思います。

(田沢湖)

「クニマスは生きていた!」感想文の具体例

「クニマスは生きていた!」の舞台は秋田県の田沢湖。田沢湖にしかいないクニマスという魚をめぐる実話だ。その昔、神秘の湖と呼ばれていた田沢湖は、1940年にダム湖になり死の湖となった。生物も姿を消し、クニマスも絶滅したと誰もが思っていた。ところが、秋田から遠く離れた山梨県の西湖でクニマスが見つかった。代々クニマス漁をしていた家に生まれ幼少のころからクニマスに触れていた久兵衛さんが、クニマスの受精卵を西湖に送ったという古い文書を発見したことから、クニマスは生きているという希望を失わず、ずっと探し続けてきたからだ。今ではクニマスは養殖で命をつなぎ、いつかふるさと田沢湖に戻れるよう、関係者は尽力している。

私はこの本を読んで心に残ったところがふたつある。まずひとつめは、クニマスが絶滅していなかったとわかった今、秋田の人々が田沢湖を綺麗にするための活動を熱心に進めているところだ。私の住む町も似たような体験をしている。町を流れる汚れた川を復活させたことだ。私たちもよく川のゴミ拾いをしている。小さいころは匂いもひどく、いつもゴミが浮いている川だったが、今では、ずいぶん綺麗になった。ゴミ拾いをしたあとは、すっきりして、町全体が生まれ変わったようなさわやかな気分になる。数日経つとやはりゴミが浮いているのを目にするが、そのゴミの数も確実に減っている。一度汚くなってしまったものは、こうやってこつこつ地道に活動を続けていかないともとには戻らないのだと思う。父の話では、この川は、昔は透明度が高く魚もたくさん泳いでいたそうだ。夏になると子どもたちはみな、川で泳いだらしい。「まったく面影ないけどな」という父の顔は少し寂しそうだ。

もうひとつの心に残ったところは、久兵衛さんが一生をかけてクニマスのために尽力したことだ。代々クニマス漁を生業にしてきた家に生まれた久兵衛さんの使命だったのかと思う。久兵衛さんは亡くなるまでずっと、クニマスのことを考えていた。もし、久兵衛さんがクニマスのために動かなかったら、クニマスは絶滅したと思われたままだっただろう。私は、人間にはそれぞれ、その人でなくてはできないことがあるのだと思う。私はまだ、将来のことを考えることができないけれど、自分の持っているものを生かせたらよいとぼんやりとは考えている。久兵衛さんは久兵衛さんしかできない仕事をやってのけたのだから、ほんとうにすごいことだと思う。クニマスで生きてきたご先祖様がそうさせたのかもしれない。

私はこの本を読んで、自分に関わるものを大切に生きることのすばらしさを感じた。「失ってみて初めてその大切さがわかる」という言葉をよく耳にするが、失ってから気付くのでは遅いのだ。人間は愚かなところと賢いところの両方を持ち合わせているけれど、こういった過ちを繰り返さないよう、気をつけるくらいの賢さはきっとあると思う。一度壊れてしまったものをもとに戻すのはとても大変な作業だ。戻るならまだいい。戻らない場合だってある。住んでいる町、毎日顔を合わせる家族や友達や、見守ってくれる大人の人。あたりまえにあると思っている毎日を、大切に生きることが、私がもらった命をつないでいくということなのだと思った。

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ABOUT ME
きょうこ先生
2003年より作文指導に携わる。東京(品川)横浜にて対面指導。 現在はオンラインをメインに、愛媛県松山市にて対面指導を行っている。長く続けてくださる生徒さんが多いのが自慢!(平均5〜6年。最長は13年!) 作文がスラスラ書けるようになった、国語の成績がぐ〜んと上がったという声はもちろんのこと、自分の意見が言えるようになった、コミュニケーション力が上がった、親子の会話が増えたなどの声も多くいただく。